東京タワーフットタウンの催しに出展 シルバーリボン、久喜工高生が金属で製作 友人には言いづらい…思春期では抱え込みやすいメンタルヘルス「気軽に話せる社会に」
心と精神の健康「メンタルヘルス」への理解を求め、差別や偏見のない社会の実現を目指すシルバーリボン運動。久喜市の県立久喜工業高校(大沢清校長、生徒数562人)では、生徒たちが工業高校の特性を生かした金属製のシルバーリボンの製作に取り組んでいる。10月10日の世界メンタルヘルスデーに合わせ、東京タワーフットタウンで行われるイベントに全国の高校で初めて出展し、来場者に作り方を伝授する。参加する生徒たちは「メンタルヘルスのことを気軽に話せる社会にしたい」と意気込んでいる。
リボンの材料は幅6ミリ、長さ80ミリのステンレス板。それをペンチで折り曲げてねじり、ボンドで装飾のラインストーンを接着。仕上げにストラップを取り付ける。同校機械科3年金属工芸班の課題研究として、10人の生徒が製作。授業で初めてシルバーリボンを知ったという邑上彩姫(あやめ)さん(18)は「ひも付きで手軽に持ち歩けるし、ネックレスなどのアクセサリーにもなる。シルバーリボン運動を広めるために使ってほしい」と呼びかける。
提案者は昨年度、同校の生徒指導部主任として生徒のメンタルヘルスについて勉強していた黒沢孝祥教諭(49)。イベントを主催するNPO法人「シルバーリボンジャパン」(横浜市)から声をかけられ、「工業高校らしいシルバーリボンを作って出展しよう」と思い立った。
シルバーリボン運動は、統合失調症への理解を求めようと、1993年に米国カリフォルニア州から始まった。雲の隙間からこぼれる陽光を希望の光に重ね、シンボルカラーを銀色に設定。現在では対象を脳や心に起因する病気・障害と心の健康に広げ、世界規模で展開されている。日本では2002年に福島県から広がり、現在はシルバーリボンジャパンが中心となって普及啓発に取り組んでいる。
メンタルヘルスの問題は他人に打ち明けづらい。特に思春期の若者は一人で抱え込んでしまい、重大な事態に発展する恐れもある。黒沢教諭は「ものづくりを通じて社会貢献を図るとともに、メンタルヘルスについて生徒たちに知ってもらうきっかけになれば」と狙いを説明する。
イベントでは、生徒たちが製作したシルバーリボンを見本として展示し、来場者に作り方を教える。参加する同班の新井知弥さん(18)は「メンタルヘルスに関することは人間関係に影響しそうで、友人には言いづらい。もっと気軽に話せる社会になるようにシルバーリボンを広げたい」と語った。