埼玉新聞

 

死去した瀬戸内寂聴さんは姉弟子 草加の評論家、思い出語る「私を忘れて当然なのに」…感激したエピソード

  • 瀬戸内寂聴さん死去

 草加市の文芸評論家・染谷冽(きよし)(84)さんは、瀬戸内寂聴さんが師事した小説家・丹羽文雄さんに27歳の時に弟子入りした。

 当時、人気作家だった丹羽さんの元には、瀬戸内さんら若手小説家が集っていた。染谷さんは38番目の弟子で、「大先輩の瀬戸内さんに話し掛けることなどできなかった」と振り返る。

 弟子たちが自分の作品を持ち寄り、批評し合う合評会で、瀬戸内さんの女性の性を率直に描いた「花芯」は、厳しい批判を浴びたが、染谷さんは「女性でなければ書けない小説だ」と先輩たちの前で勇気を出して評価した。後で瀬戸内さんから話し掛けてくれ、お礼に瀬戸内さんの部屋に招かれてお茶をごちそうになったことを今でも鮮明に覚えている。

 売れっ子作家になった瀬戸内さんとの交流は途中で途絶えたが、2007年に徳島県で開かれた国民文化祭に染谷さんが参加した時、瀬戸内さんが講演した。講演後に思い切って控室に行ってあいさつしたところ、「あの時の坊や」と瀬戸内さんはすぐに思い出してくれたという。「忘れて当然なのに覚えていただき感激しました」と染谷さんは振り返った。

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