何かが体の中を通り内臓が 野外病院で医療支援…ガザ派遣医師、生々しい状況伝える イスラエルとの紛争激化から1年、浦和南高で「世界といのちの授業」 心痛める生徒ら、支援の方策探る
イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区の紛争激化から1年を振り返る「世界といのちの授業」が、さいたま市南区の同市立浦和南高校(相坂賢将校長)で開かれ、ガザで医療支援に当たっていた医師の安藤恒平さん(45)と同校3年生31人がトークセッションした。安藤さんから現地の様子を聞いた高校生らは心を痛めつつ、支援の方策を探っていた。
安藤さんは、赤十字国際委員会(ICRC)からガザに派遣され、整形外科医として赤十字野外病院で現地の負傷者らの治療に当たり、先月帰国した。過去にも3回ガザ入りし、南部ハンユニスのヨーロピアンガザ病院に外科・整形外科医として勤務。それ以前の2011年から19年までは、国境なき医師団(MSF)の一員としてナイジェリア、パキスタン、イエメン、南スーダンなどに赴任した経験を持つ。
生徒たちは、選択授業「英語探求」の一環で、赤十字の人道支援やイスラエル―ガザ紛争について事前に学習し、理解を深めた上でこの日の授業に臨んだ。
安藤さんは、破壊された都市の様子や天井が落ちた病院、敷地内の看護学校の廊下で寝泊まりする様子、入り口での武器チェックなどを画像で説明。「具体的にどんな患者さんが来るのか」との生徒の質問には「ほとんどがけがをした人。何かが体の中を通り抜けたことで、大きな骨折をしたり、内臓が傷ついたり、頭をけがしたりして病院に運ばれてきた」と生々しい悲惨な状況を伝えた。
「命の危険は感じたか」については「窓がびりびりしたり、おなかにどーんと響く音や衝撃波を感じたりしたが、音が聞こえるということは生きているということ。命の危険とは思わなかった」。さらに「赤十字マークは攻撃されない保護の印でもある。常に国際赤十字と情報を共有していた」とも。家族を亡くし、自身も重傷で運ばれた6歳の男児が全く話さなかったエピソードでは、心のケアを専門にするチームと共に治療に当たったことを紹介した。
ウィトン・キャスリーンアナ・明愛理さん(18)は「4回も派遣され、多様な手術をしていることに驚いた。私たちにできることは、赤十字を通して募金することやもっと下の世代に支援の輪を広げること」としっかりとした口調で語った。伊藤いちごさん(17)は「現状に心が締め付けられた。野外病院の存在を初めて知った。私たちにもできる支援をしたい」と真剣な表情で話した。