値下がりして!原油高で埼玉県内のガソリン、7年ぶり160円台に 灯油価格も上昇、家計の悩みの種にも
原油高を背景にガソリン価格の高値圏の状況が続く。県内の平均小売価格はレギュラーが10月25日に1リットル当たり162円10銭となり、2014年10月以来7年ぶりに160円台となった。暖房利用が増える冬場を前に灯油価格も上昇。増加分を価格に転嫁しづらい企業の経営を圧迫する状況が出始めているほか、家計への影響に懸念の声も上がる。
■企業や家計圧迫
深谷市の男性会社員(41)は早朝勤務があり、自宅から勤務先まで往復75キロを車通勤する。高騰前は満タン給油は4千円程度だったが、原油高の影響で最近は5千円台後半が増えた。会社からガソリン代の支給もあるが、価格が会社設定の単価を上回る時もあり、「差額分は自身で負担することもある」。買い物に行く商業施設は自宅から近い店舗に限るなど、出費の抑制に努めているという。
春日部市のパート女性(55)は11月に入り灯油を購入したが「昨年より2割ほど高く驚いた」と話す。冬場は部屋を石油ストーブで暖めるため価格上昇は悩みの種。「早く値下がりしてほしい」と望む。
■値上げできない
原油高は事業者の経営を圧迫する。県東部でクリーニング店を営む男性(42)は「今冬を越せるかどうか」とため息をつく。新型コロナウイルス下でテレワークが普及した影響で、スーツなどビジネス需要が大幅減。昨年の売り上げは前年比で3割減。その中での原油価格高騰に「今が一番苦しい」と声を落とす。
衣類に付いた汚れを取る溶剤や乾燥機などを動かすボイラーの燃料に石油や灯油が使われる。配送車のガソリン代も増え、プラスチック製ハンガーなどの仕入れ価格も上昇。「4月に値上げをした。お客さまのためにも簡単に値上げできない」と語った。
県北部でトマトやキュウリをビニールハウスで栽培する農業生産法人の男性社長(45)は「重油価格が1リットル当たり100円を超すのは初めて見た」と驚きを隠さない。
ハウス内の温度を20度程度に保つため重油を使用。10月上旬は80円台前半だったが、価格上昇が続き11月に入り100円台に突入。昨年の同時期は75円程度だった。肥料や資材も高騰するが「経営的には三重苦だが、出荷価格に転嫁しづらい」と嘆く。
■再び外出控えも
「ガソリン価格高騰で満タン給油が減り、定額または定量給油が増えた」と話すのは県南部で複数のガソリンスタンドを経営する男性経営者(59)。個人では買い控えの傾向が顕著だという。半導体不足に伴う自動車関連の生産調整で、輸送量が低下した物流企業の需要も減る。仕入れ値上昇も、販売価格には反映できない一方、取引先からは契約単価の引き下げが求められ「苦境が続きそうだ」と語る。
夏場は帰省など長距離需要で購入が増える時期だが、今夏は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出抑制で、需要は皆無。感染が落ち着き秋の行楽需要に期待も、原油高で再び外出控えの傾向が強まりそうで「持ち直しの期待感が出始めた中、原油高がそれに冷や水を浴びせた状況になる」とため息交じりに語った。
■見いだせない最適解
冬場に向けた原油の需要が増える中で、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」は4日の閣僚級会合で追加増産を見送った。日米などの消費国が供給量を増やすよう求めていたが、新型コロナの感染動向次第で余剰になりかねないとの懸念から、受け入れなかった。これを踏まえ男性経営者は「高騰は当面続く」とみる。
経済産業省が10日発表した8日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの県内平均小売価格は1日時点の調査価格と同じ164円10銭だった。3週連続の160円台。灯油の店頭価格は18リットル当たり1886円で、10週連続で上昇しているほか前年の同時期より3割高騰している。
帝国データバンク大宮支店情報部の梅林政文氏は「ガソリン高騰時の揮発油税減税や、原燃料費の高騰分を価格転嫁しやすくする措置の検討などの声が聞かれるが、足元では最適解が見いだしづらい環境」と対応を取りづらい状況を指摘した。