【“1人バンド”日食なつこの15年 #2】初めての称賛今も耳に残る「言葉に真実味あった」
自らの音楽を“1人バンド”と称し、多彩な音をピアノで表現し活躍するシンガー・ソングライター日食なつこには、これまで幾つかの転機があった。独特な演奏スタイルを貫いてきた日食を後押しし、支えてきた出来事とは。
岩手県花巻市で生まれ育った。本格的な音楽活動の始まりは2009年1月、高校2年生で盛岡市のライブハウスが開いたイベントのステージに立ったこと。3曲を披露し終えると、スタッフの若い男性が近寄ってきて「なつこ、いいねぇ!」とつぶやいた。仕事にするほど音楽を愛する人からの称賛が自信をくれた。「思わずこぼれたような言葉で、すごい真実味があって…。うれしくて、口調ごと覚えています」
16年には予期せぬ風が吹いた。音楽バラエティー番組「関ジャム 完全燃SHOW」(現「EIGHT―JAM」)で楽曲「水流のロック」が紹介されたのだ。くしくも「自分史上最も攻撃力の高い楽曲」と自負する「ログマロープ」を収録したミニアルバム「逆鱗マニア」(17年)を準備していたタイミングだった。「間髪入れず渾身の作品を送り出せたのは、音楽活動を続ける上で大きな追い風になったと思います」と振り返る。
このミニアルバムには、16年に閉店した地元花巻の「マルカン百貨店」をテーマにした「あのデパート」も収録していた。在りし日の屋上や食堂を舞台に制作されたミュージックビデオは、思い出の温かさとさみしさを感じさせ、百貨店に親しんだ地元の人々のみならず多くの共感を呼んだ。
【にっしょく・なつこ】1991年、岩手県花巻市生まれ。名前は皆既日食の特別感を気に入ったことから付けた。多彩なピアノや力強く透明感のある歌唱が特徴。ヒット曲に「水流のロック」など。「弾き語りソロアーティスト」を名乗る。