【“1人バンド” 日食なつこの15年 #3】初ベストは「現在地」 貪欲に音と活動を追求
シンガー・ソングライター日食なつこは、今年活動15周年を迎え、9月にはベストアルバムを発売した。歌詞を考える際の手書きのノートやミュージックビデオのコンテなどを見せる展覧会も3月に東京都内で開催した。
楽曲を作る時は「思想や独り言として歌詞が浮かび、そこに抑揚をつけるようにメロディーが重なっていく」。書き連ねては消し、また書いたノートは日食の魂だ。見せることにためらいはあったが「私なら好きなアーティストの制作の過程を見たい」と展示に踏み切った。
自身初のベストアルバムは、新曲を含む23曲をCD2枚組みに収録。初期の楽曲「開拓者」はリリース当時の音源と歌い直したバージョンの両方を収録した。「15年でなんとかここまで仕上がりました、という“現在地”を残しておこうと思いました」
15年の間には、ライブハウスやコンサートホール以外を会場に選び「お寺ツアー」や「美術館ツアー」を開催したことも。「歌詞の言葉がより聞き手に伝わる環境はどこにあるだろう」と模索した結果だ。とりわけ寺が印象に残っている。「すごかったです。私の曲とのマッチング具合が高かったのかな。お客さんからは『説法を聞いているみたい』と言われました」
やりたいことは尽きない。「バイオリンやビオラのような弦楽器の音も、ピアノにうまく落とし込みたい」。貪欲に活動も音も追求する日食は「まだまだずっと続けます」と挑戦的にほほ笑んだ。
【にっしょく・なつこ】1991年、岩手県花巻市生まれ。名前は皆既日食の特別感を気に入ったことから付けた。多彩なピアノや力強く透明感のある歌唱が特徴。ヒット曲に「水流のロック」など。「弾き語りソロアーティスト」を名乗る。