埼玉新聞

 

7歳で長男死去…悲しむ母、ぶつけた怒り 「生きてくれてありがとう」辛い運命も言葉で温かい気持ちに

  • 児童たちに優しく語り掛ける巻淵恵さん=4日午前、狭山市下奥富の西武学園文理小学校

 命の大切さや生き抜く力について考えてもらおうと西武学園文理小学校(狭山市下奥富、飛田浩昭校長)で4日、「いのちのお話」と題した講演が行われ、同小4年生の児童51人が参加した。

 講師を務めたのは東京都八王子市を中心に小児がんの啓発活動などを行っている「サザナミプロジェクト」代表の巻淵恵さん(35)。巻淵さんは2017年11月に長男の漣(れん)君を小児がんで亡くした。大切な家族を失った悲しみから一歩ずつ立ち上がるために18年から自身の悲しみを癒やす「セルフグリーフケア」の一環として同プロジェクトを立ち上げ、絵本の弾き語りや講演活動を行っている。

 講演では7歳で亡くなった漣君がサッカー選手を夢見ていたことや病気が進行するにつれて体を動かしづらくなったこと、車いすで小学校に通っていたなどを写真や漣君の言葉として児童たちへ巻淵さんが優しく語り掛けた。巻淵さんは「この辛い運命に怒りをぶつけることが何度もあった。それでも『漣君今日も生きていてくれてありがとう』と感謝の言葉を述べると温かい気持ちになった」というエピソードを紹介し、つらい経験の中でも感謝の気持ちを持つことの大切さも訴えた。

 講演の最後に巻淵さんは児童と三つの約束として(1)口は人を励ます言葉や感謝の言葉を言うために使おう(2)目は人のいいところを見つけるために使おう(3)命は「夢に向かってチャレンジする」ために使おう―と呼び掛け「みんなが生きていることは当たり前ではない。自分自身を今まで以上に大切にしてくれることを願っています。生きていれば何でもできる、強く生き抜いていってほしい」と締めくくった。

 講演を聞いた千葉芽さん(10)は「自分の息子さんの話を通じて、私たちに希望を持つ大切さを伝えてくれてうれしかった。いつも当たり前に過ごしている一日をもっと希望を持って過ごしたいと思いました」と話していた。

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