【衆院選評論】信頼回復へ 地元から/編集局長・砂生敏一
今後の4年間のかじ取りをどの党に託すのか。誰に国政を任せるのか。それを決める重要な衆院選が公示された。新政権の信任を問うだけでなく、2012年に政権に復帰して以降の「自民党政治」そのものの検証と総括の場といえる。
物価高騰の一方で経済が停滞し、格差や分断も広がっている。人口減少、少子高齢化という喫緊の課題に直面しており、国際情勢も混迷の難局にある。極めて重要な政権選択の衆院選であるにもかかわらず、十年一日のごとく「政治とカネ」の問題や「政治改革」が争点となるようでは、政治の停滞を招くと言わざるを得ない。
だからこそ、各党、候補者には政権構想や政策をしっかりと丁寧に国民に示し、訴えてほしい。耳障りのいい政策を並べたり、個々の課題に対して問題点を指摘するだけでなく、実効性のある具体策と展望を示すことが大切である。
今回の衆院選で適用された10増10減に伴い、埼玉県の小選挙区は選挙区割りの変更も含めて15区から16区に増えた。立候補者も、「野党共闘」が一定程度進んだ前回の44人と比べ66人に増えた。選択肢が増えたことで、議席獲得にどのような影響が出るのか。また自民候補者がいない選挙区があり、有権者がどのような投票行動をするのか。埼玉の政治風土を知る上でも興味深い選挙戦になろう。
衆院選は国政を論じるばかりではない。やはり選挙区の代表となるのだから、候補者は地元を語り、住民の声や地域の課題を感じ取ることが、国を良くするための一歩となる。
国政、地方を問わず選挙における投票率の低下が深刻化している。棄権が増えれば増えるほど、「選挙離れ」が進めば進むほど、一定の組織力、支持層を持つ政党の得票が増す。それぞれの投票者の1票が政治や行政、暮らしと密接につながっていることを実感してもらうためにも、政治への信頼回復が今回の衆院選のキーワードである。