埼玉新聞

 

<川口いじめ>許されない…違法な対応をした川口市に賠償命令「まずは元生徒に謝るべき」 市は裁判を欠席

  • 元生徒が判決に寄せた自筆のコメント

  • 原告の元生徒が寄せたメッセージを読み上げる母親の森田志歩さん(右)ら=15日午後、さいたま市

 川口市立中の元生徒の男性(19)が、いじめが原因で不登校となったのは学校や市教育委員会の対応が不適切だったためだとして、市に550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、さいたま地裁は15日、市に55万円の支払いを命じた。

 男性は2015年に入学。所属したサッカー部で会員制交流サイト(SNS)を使った嫌がらせや、顧問からの体罰を受けて不登校になり、市が設置した第三者委でいじめと認定された。

 判決理由で岡部純子裁判長は、学校側がいじめを重大事態として扱わなかったことや、顧問による体罰があったことを違法と認めた。

■元生徒「助けてくれる」思い届かず

 傍聴の市民らで満席となった法廷では、市側が欠席する中、岡部純子裁判長は判決主文を読み上げた。

 「いじめ対策防止推進法が規定する重大事態の調査を行わなかったことを違法と明言した判決は全国で初めてのケース」と、判決後の会見で、元生徒側代理人の石川賢治弁護士は切り出した。

 大津いじめ事件で代理人を務めた石田達也弁護士も「調査を怠れば違法とはっきり述べた。全国に警鐘を鳴らす判決だ」と力を込めた。

 判決は(1)顧問の違法な体罰(2)不登校になり自傷行為まで発生したことを防止法が規定する重大事態として調査しなかったこと(3)校長や教頭、顧問教諭が「いじめがなかった」と事実とは違う発言をした―の3点で市側の違法を認めた。

 「教員のいじめではないという発言が国家賠償法上で違法行為であると明言したことも、初めてだと思う。いじめがあるかないか分からない段階で教員が安易にいじめではないと言うのは許されない。問題になっているケースが多いだけに影響が大きい判決だ」と石川弁護士は指摘した。

 男性の母親の森田志歩さんは「長かった裁判で、たくさんの方々に支えられたことに感謝している」と話し、息子のコメントを読み上げた。「ぼくはいじめられた時、(顧問の)先生や校長先生、教育委員会は絶対に助けてくれると思っていました…」。判決文には「原告が顧問を慕っていたことも勘案すると、原告は顧問の体罰による少なからざる心身の苦痛を受けたものと推認できる」という一文があった。

 森田さんは「市長や議会は無関心な状態だった。市議会でもきちんと対応してほしい」と指摘した。傍聴した川口市議会の碇康雄市議と木岡崇市議らは「市や私たち市議会の姿勢が問われる判決。まず謝罪することが大事だ」と話した。

 判決を聞いた市内のある校長は「男性に謝る場面を考えるべきだと思う。この判決を自分のこととして真摯(しんし)に受け止めたい」と打ち明けた。

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