「民意の変化で緊張感」 埼玉の16選挙区は与野党で8議席ずつ分け合う 投票率は1996年以降で過去最低の51・14%
県内16小選挙区は与野党が8議席ずつを分け合い、過半数の233議席を巡って激しく競り合った国政選挙の縮図となった。
投票行動や政治意識を長年研究してきた松本正生・埼玉大学名誉教授(69)は「地味だけど落ち着いた選挙ではあった。その中でも民意の変化で政治に緊張感が生まれた。国民や維新が自民から秋波を送られて喜んで行ってしまうと、なんだという話になる。与野党が緊張感を持って対峙(たいじ)できるかどうか」と注視すべきポイントを挙げた。
無党派層の動向が投票率や選挙の流れを左右したこれまでの常識が覆り、欠かさず選挙に参加していた層の投票行動が流動化している現状を分析しつつも、保守層などの自民党支持者が投票先を変えたことも今回の結果に大きな影響を与えたとみる。
公明党の石井啓一代表が敗れ、全国区で注目を集めた埼玉14区を例に挙げ、「投票に行かなかった人たちが結果から何を思うか。投票率が低いなりに変化が起こり、自分は行かなくていいと思うのか、変化に刺激を受けて自分も関わった方がいいと思うかどうか」と指摘する。
衆院選の投票率は全国小選挙区で53・85%、比例代表で53・84%と戦後3番目に低い水準で、県内16小選挙区の投票率も51・14%と前回を2・83ポイント下回り、小選挙区比例代表並立制が導入された1996年以降で過去最低を記録した。
急転直下の解散総選挙を受けて、多くの自治体で投票所入場整理券の印刷や発送が間に合わず、公示翌日の16日には有権者の手元に届かなかった。期日前投票の推移にも顕著に表れ、24日以降は長蛇の列を作る期日前投票所も見られた。小選挙区別での最高投票率は5区(さいたま市大宮区など)の54・76%。1区(さいたま市浦和区など)が54・75%と続いた。
松本教授は「かつて都市で低く、地方で高かった投票率はいつの間にか逆転する。都市はあまり下がらず、地方の低下が大きい。(地方の社会を)成り立たせていた人のつながりがなくなった。投票率の推移は政治への関心度よりも、社会が無縁化していく指標。構造的な社会の変化と連動してしまっている」と警鐘を鳴らした。