マイコプラズマ肺炎…過去最多を4週連続更新 学会が緊急提言も 昨年同時期の25倍…1医療機関あたりの患者数 埼玉、東京は全国平均の150%を超える高水準
国立感染症研究所が29日公表した調査結果によると、過去最大の流行となっているマイコプラズマ肺炎の感染が、4週連続で過去最多を更新し、感染拡大が収まっていないことが分かった。
最新データ(10月14日~10月20日)では、1医療機関あたりの患者数が全国平均2・01人と、過去最高だった前週(10月7日~10月13日)の同1・95人から拡大。昨年同時期の同0・08の約25倍という急増ペースが続いている。
埼玉県は、1医療機関あたりの患者数が3・08人で、東京都の3・84人とともに、全国平均の1・5倍を超える高水準となっている。
■感染対策へ5学会が提言
マイコプラズマ肺炎の急増を受け、10月24日、日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本マイコプラズマ学会の5学会が合同で、対策強化を促す提言を発表。新型コロナウイルス感染症と同様に飛沫感染するため、マスク着用、換気などの感染予防を呼びかけている。
〈提言の抜粋 10月24日〉
① マイコプラズマ感染症とは
マイコプラズマ感染症は、マイコプラズマという細菌による感染症で、様々な症状をきたします。現在、流行しているマイコプラズマ肺炎は、一般的な肺炎と異なり、学童期から成人にみられ、高齢者には少ない感染症です。ほとんどが軽症で、自然に治ることもありますが、ごく稀に重症化することがあります。現在の流行は最後に流行した2016年の流行を超える流行となっています。
②どのような症状があるのか
発熱、倦怠感、頭痛、咽頭痛などの症状が出始めて、数日後に咳嗽(せき)が出てきます。せきは痰を伴うことが少ない乾いたせき(乾性咳嗽とよびます)が特徴で、解熱した後も長く持続することがあり、「長引く頑固なせき」と表現されます。ただし、これらの症状だけからマイコプラズマ感染症を診断することは困難です。呼吸器症状以外にも、稀ではありますが、中耳炎、皮疹、心筋炎、ギランバレー症候群(神経の炎症で手足が動きにくくなるなどの症状があります)など肺以外の病気を合併することもあります。
③どのように流行するのか
新型コロナウイルス感染症のように、せきやくしゃみの飛散から感染が拡がる、いわゆる飛沫感染が主体です。潜伏期は2~3週間で、患者と濃厚に接する家族内、もしくは、職場内などの小集団でしばしば拡がりますが、インフルエンザのように短期間で地域での大規模な感染拡大が起こることは稀であるとされています。ただし、学校で流行を引き起こし易いことから、夏休み明けの新学期は要注意です。さらに子供が学校で感染し、家庭にもちこむことによる家族内感染事例も多く発生しています。
④感染しないようにするには
新型コロナウイルス感染症と同様に、飛沫感染しますので、マスク着用、換気などの感染予防対策を行いましょう。併せて、石けんによる手洗いやアルコールによる手指衛生も併せて行いましょう。
⑤感染が疑わしい、あるいは感染した場合
マイコプラズマ感染症は感染症法上で5類感染症と定められており、毎週の全国の流行状況が把握されています。現在のように流行期にある場合、風邪のような症状、せきがある、周囲に同様の症状の方がいる、という場合は、マイコプラズマに感染している可能性があるため、近くの医療機関を受診してください。なお、現在、新型コロナウイルス感染症も流行しています。医療機関を受診する際には、医療機関に連絡を入れて受診することをお勧めします。
受診後に、本感染症の診断がなされ、抗菌薬で治療を行われた場合、一般的には2~3日で解熱することがほとんどですが、解熱しない、せき、そのほかの症状が悪化する場合は、再度、医療機関にご相談ください。
⑥学童の場合、出席停止期間は
マイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法で「第三種学校伝染病」に指定されているため、急性期は出席停止となります。一方で、明確な出席停止期間は定められておらず、症状が軽快したら登校可能となります。
=埼玉新聞WEB版=