【衆院選埼玉】「裏金」大逆風にさらされ 想定外の2千万円「この時期に何故こんなことを」 公明に飛び火し代表落選「自民支持者の票、当落に直結」 <民意の先に・上>
自民党派閥の裏金事件に象徴される「政治とカネ」の問題が最大の争点となった今回の衆院選。自民、公明両党の獲得議席は計215議席にとどまり、与党は過半数(233議席)を大きく割り込んだ。県内16小選挙区でも自民は前回の12議席から8議席に減少。公明党も党代表が勝負を懸けた14区で議席を獲得できず、逆風にさらされながらの選挙戦には、さらに厳しい結果が待っていた。
最後まで有権者の怒りを過小評価していた自民党に、2009年以来15年ぶりの単独過半数割れという審判が下った。従来からの支持層も固め切ることができず、県連会長の柴山昌彦は28日の会見で「組織を維持するのに必要な信頼が根本から崩れていた」と実感を込めた。
2月に政治資金収支報告書の修正を陳謝した柴山は、比例代表の重複立候補が認められず、背水の陣で今回の衆院選に臨んだ。区割り変更や候補者増加も影響したのか、他の自民候補が2万~5万票を減らす中、柴山は約1万1千票の減少にとどまり、県内で処分を受けた4人のうち、ただ一人議席を守った。
誠実な印象が地元に浸透していた柴山でさえ、「通りがかりに『裏金議員』と厳しい声を投げかける方々も相当数いらっしゃった」。衆院選終盤には、非公認候補が代表を務める党支部に対する2千万円の活動費が支給されたいたことが明らかになり、逆風はさらに強まった。
■想定外の2千万
「裏金問題」で非公認となった三ツ林裕巳は前回から5万7880票減らし、落選の憂き目を見た。活動費の支給について「本当に想定外。非公認候補者は使うことができないとの決定も聞いた。この時期に、なぜそういうことをするのか」と、胸突き八丁の勝負どころで逆風が一層強まったことに実感がこもった。
1区で競り勝った村井英樹は28日の得票報告会で「世の中の感覚と内輪の論理に乖離(かいり)が生まれ、どんどん大きくなった。こういうずれを党は正していかないといけない」と話し、ある自民陣営の選対幹部は「総裁や幹事長の責任。早く辞めてほしい」と不満をぶちまけた。
自民総裁選で「予算委員会での論戦を通じて有権者に判断材料を提供する」と訴えながら解散を強行した首相の石破茂の変節も、内閣支持率に表れた。共同通信社が就任直後の10月1、2日に行った世論調査では支持が50・7%、不支持が28・9%だったが、19、20日の調査では支持41・4%、不支持40・4%となり、負け戦を暗示していた。
■21年ぶりの擁立
政権批判は、連立を組む公明党にも飛び火した。14区で党代表の石井啓一が落選し
た結果は、衝撃をもって全
国で報じられた。県本部幹事長の塩野正行は「批判は日に日に強まり、極めて厳しい情勢を認識しながら最後まで戦い抜いた」と選挙戦を総括した。
公明は全国の小選挙区に石井ら11人を擁立したものの、当選は4人。「常勝関西」と呼ばれた大阪で維新に全敗を喫し、公示前の32議席から8議席減の24議席獲得にとどまった。
「10増10減」の区割り変更で県内小選挙区が15から16に増加し、自民現職が不在となる14区に白羽の矢が立った。昨年3月に石井の公認が決まると、準備を進めていた自民の地域支部が強く反発。幹事長の茂木敏充(当時)が地元支援者への説明を尽くして決着を図った。
県内小選挙区への独自候補擁立は、3期10年を務めた若松謙維が03年11月の第43回衆院選(6区)で落選して以来約21年ぶりで、手探りの選挙戦だった。「公明の得票数よりも自民支持者が圧倒的に多い。自民の協力がどれだけ得られるかは、当落に直結する」と塩野。与党大敗にも公明が小選挙区で勝つには、自民票がどれだけ上積みされるかが勝敗の鍵を握ることを強調した。(本文中敬称略)