【衆院選埼玉】自民支持層からも批判票 野党「敵失」で勝利も 「受け皿」明暗分かれる 立民、国民、れいわ議席増 維新と共産は1議席にとどまる <民意の先に・下>
自民に逆風が吹きすさぶ中で行われた今回の衆院選。対する野党は共闘から競合にかじを切りながらも、「裏金問題」を突破口に批判票を取り込み、与党を過半数割れに追い込んだ。埼玉県内16小選挙区では野党が8勝で自民と拮抗(きっこう)し、比例復活を含めると15議席獲得と躍進。ただ、立民や国民、れいわが議席を増やした一方、維新は比例復活の1議席、共産は比例北関東ブロック全体で1議席にとどまり、「受け皿」となった野党内でも明暗が分かれる形となった。
「国民生活が苦しい中、裏金議員がこの選挙区にいたことの民意を反映した結果だ」。埼玉9区で自民前職との約4千票差の接戦を制し、初当選を果たした杉村慎治は支持拡大の理由をこう語った。
9区の自民前職は政治資金の問題を巡り、比例重複立候補が認められなかった。立民は同区を最重点区の一つに定め、野田佳彦代表や小川淳也幹事長など党幹部らが連日選挙区入り。自民候補の「裏金問題」の批判を繰り広げた。
政治資金問題で非公認・比例重複不可となった候補者が立候補したのは県内計4選挙区。うち3選挙区で野党候補が勝利した。選挙戦終盤には非公認候補が代表を務める支部への活動費2千万円支給問題も明るみに出て、自民への批判は頂点に。問題に直接関係のない自民公認候補者や公明にも打撃となった。
■自民批判の票は
無党派層と並んで鍵を握ったのが自民支持層だ。共同通信の出口調査結果によると、9区では支持政党を持たない有権者の半数超が杉村に投票。無党派層からの投票が約22%だった自民候補に大きく差をつけた上、杉村は自民支持層の1割超からも票を獲得した。自民候補者や政権を支持していた層からも批判票が対立候補に流れた形だ。
自民支持層の票の行方が結果を左右した傾向は9区以外にも7区などでも見られた。ただ、いずれの選挙区も接戦の末の薄氷の勝利だ。杉村も「得票数はほぼイーブンだった。この地域の5割の声はまだ聞き取れていないということだ」と気を引き締めることを忘れなかった。
また、比例北関東ブロックの得票数は、立民が県内約70万票で前回から6万6千票減らし、全県的に小選挙区での立民候補への投票は必ずしも積極的な行動ではなかったことも浮き彫りとなった。
■比例で躍進の党
一方、比例で躍進ぶりを見せたのが国民とれいわだ。国民は前回から23万票超を上乗せした約39万5千票で比例2議席を獲得。重複立候補者のうち2候補が小選挙区で当選したため、1議席を公明に譲る事態になった。れいわも9万票近く比例得票を伸ばし、1議席をつかんだ。
共同通信の出口調査では、国民は10~30代で立民よりそれぞれ約5~10ポイント高く支持を集め、れいわは30、40代を中心に幅広く支持を集めた。一方の立民は年齢層が高くなるにつれて支持を伸ばす傾向となった。
比例票の掘り起こしを目指し、積極的に小選挙区の候補者擁立を進めた維新は前回から11万票減の約22万票と厳しい結果に。共産も、しんぶん赤旗での「2千万円支給問題」報道などで自民を追い詰めながら、比例では7万票減の約21万票と苦戦した。
共産の柴岡祐真県委員長はこう口惜しむ。「赤旗で始まり赤旗で終わる選挙だった。自民の大敗をつくり出したが、(票は)私たちのところに来なかった」
(本文中敬称略)