社長死亡…バールで背後から一撃 暴行し、事務所に放火して殺害 男に懲役23年 「共犯者との間で事前に犯行の流れ共有」「計画性が相当に低いとは言えない」
2022年5月、朝霞市の内装会社社長男性=当時(43)=を暴行し、事務所に放火して殺害したとして、殺人や現住建造物等放火の罪に問われた茨城県鹿嶋市、無職大西寿貴被告(33)の裁判員裁判の判決公判が7日、さいたま地裁(金子大作裁判長)で開かれた。金子裁判長は大西被告に懲役23年(求刑・懲役24年)を言い渡した。
金子裁判長は判決理由で、大西被告が共犯の男(39)=同罪などで起訴=から殺害計画を伝えられ、理解した上で犯行に及んだと指摘。殺傷能力のあるバールを持ち込み、男性に背後から最初の一撃を加えたと認定し「共犯者との間で事前に犯行の具体的な流れが共有されていたことは明らかで、計画性が相当に低いとは言えない」とした。内装業で男性の孫請けだった大西被告が報酬を巡るトラブルで不満を抱いていたことについては「他人に暴力を加える理由にならない」と非難した。
弁護側は犯行は共犯の男が主導し、大西被告は「犯行当日まで殺害は(男の)冗談と考えており、計画性は低く、従属的で、関与は限定的」と主張。また、「金銭トラブルによる怨恨(えんこん)」が大西被告の動機とし、男から殺害の報酬の受け取りや請求はなかったとして、金銭目的の犯行との見方は否定していた。
判決などによると、大西被告は仕事仲間の男と共謀し、22年5月14日、朝霞市の「長葭内装」事務所兼作業場で、男性の頭部をバールで複数回殴打。頭蓋骨陥没骨折などを負わせ、事務所兼作業場に放火し、急性一酸化炭素中毒などで死亡させた。また、6月3日、工事報酬の未払いがあるかのように装い、同社から約283万円を詐取しようとした。
■元妻もだまそうとした(以下、初公判記事)
2022年5月、朝霞市の内装会社社長の男性=当時(43)=を暴行し、事務所に放火して殺害したとして、殺人や現住建造物等放火の罪に問われた茨城県鹿嶋市、無職の男(33)の裁判員裁判の初公判が17日、さいたま地裁(金子大作裁判長)で開かれた。男は「間違いありません」と起訴内容を認めた。判決は11月7日。
冒頭陳述で検察側は、22年4~5月ごろ、内装業の下請け業者だった男への報酬支払いに窮した仕事仲間の共犯の男=同罪などで起訴=から、男性を殺害し、同社に虚偽の工事代金を請求する計画を持ちかけられたと説明。殺害後、2人はメッセージアプリのやりとりを削除。男性に代わり社長に就いた元妻から虚偽の報酬をだまし取ろうとしたが、元妻に支払える金銭がなく、未遂に終わったとした。
一方、弁護側は男が共犯の男から「男性からの支払いが滞っている」と言われ、男性に不満を抱いたと説明。「男性を殺せば請求できる」などと殺害計画を持ちかけられ「憂さ晴らしの物騒な冗談だろう」と考えていたとして、犯行を主導したのは男ではなく共犯の男だったと主張した。
起訴状などによると、男は仕事仲間の男と共謀し、22年5月14日、朝霞市の「長葭内装」事務所兼作業場で、男性の頭部をバールで複数回殴打。頭蓋骨陥没骨折、脳挫傷などを負わせ、事務所兼作業場に放火し、男性を急性一酸化炭素中毒などで死亡させたとされる。また、6月3日、請け負い工事の未払い報酬があるかのように装い、同社から約283万円を詐取しようとしたとされる。
■死因は焼死と判明(以下、事件当初の記事)
朝霞市上内間木の内装会社、「長葭(ながよし)内装」で2022年5月14日に事務所兼作業場が全焼して焼け跡から男性1人の遺体が見つかった火災で、県警は16日、現場の出火状況などから放火殺人事件と断定し、朝霞署に80人態勢の捜査本部を設置した。遺体は連絡の取れていない同社の社長男性(43)とみて、身元の特定を急ぐとともに、殺害された経緯を調べる。
捜査本部によると、司法解剖の結果、死因は焼死と判明した。遺体の気道には、煙を吸い込んだ際のすすが残っており生前に火を付けられたとみている。また、現場の平屋のプレハブはガスが通っておらず、普段は火の出ない場所から火が出ていたことから、県警は放火殺人として捜査を開始した。
全焼したプレハブは、横10メートル、縦13メートルの南北に長い建物で、約40坪の広さ。作業場と事務所スペースに分かれていて、遺体は建物南側の事務所の床で倒れていた。出火は建物の内部からとみられ、出入り口の扉は消防が突入する際には施錠されていたという。作業場のシャッターは下りていた。
県警によると、同社は社長男性が1人で経営していて、同業者の仕事を手伝ったり、手伝ってもらうこともあったという。
14日午前9時50分ごろ、通行人の女性(47)から「建物から煙が出ている」と119番。プレハブを全焼し、焼け跡から身元不明の遺体が発見された。