埼玉新聞

 

幸手の権現堂桜堤が危機 老木化や虫被害、まつり中止で保存会の運営も苦境「コロナの第6波来たら…」

  • 桜の名所として観光客でにぎわう幸手権現堂の桜堤=2019年4月

 幸手市の権現堂桜堤の保存活動が苦境に立たされている。桜の老木化が進み、クビアカツヤカミキリの被害も判明、新型コロナウイルスの感染予防のため開花時期に毎年行われていた「桜まつり」は3年連続で中止が決まった。権現堂を管理するNPO法人「幸手権現堂桜堤保存会」の大野芳夫理事長は「次から次へと課題が出てくる」と頭を痛めている。

■精神的支柱も

 権現堂桜堤は江戸時代に築かれた土手の約1キロにわたってソメイヨシノが咲き誇る。開花の時期は、毎年約100万人の花見客でにぎわう県内有数の桜の名所だ。

 冬はスイセン、梅雨の頃はアジサイ、夏はヒマワリ、秋はマンジュシャゲが咲き、文字通り四季折々の花が楽しめる。

 ソメイヨシノは1920(大正9)年に植樹が始まり、太平洋戦争で燃料のために伐採されたが、49(昭和24)年に再び植えられた。樹齢70年を超えるものもり、倒れる危険のある老木は伐採しているが、新たに植え替えることは難しいという。

 加えて昨年9月、桜堤のソメイヨシノ2本がクビアカツヤカミキリの被害に遭っていたことが分かった。保存会は県の指導を受け、ネットで保護するとともに薬剤を注入するなど、被害拡大を防ぐ対応に追われた。

 さらに保存会設立時から精神的支柱だった前理事長の並木克己さんが同年10月に他界。大野さんは「スイセンの咲きが良くない。並木さんを悲しんでいるのかな」とおもんぱかった。

■経費の負担重く

 権現堂堤は県営権現堂公園として、保存会が県から指定管理業務を受託し管理している。管理委託料に加え、花見時期の駐車場収入が財政の柱になっていた。

 89回行われてきた恒例の「桜まつり」は、新型コロナの感染予防のため2年連続中止に。すでに今春の中止も決まっている。

 まつりがなくても、桜を目当てに客は訪れる。コロナ前に比べ来客数は減ったが、昨年、一昨年は約24万人が来場した。駐車場を開放せざるを得ず、誘導や警備員の人件費は保存会の持ち出しになった。

 財政上の負担が大きく、今春は駐車場代を有料化する方針。普通車500円程度を検討しているという。「このままでは運営が厳しい。有料にせざるを得ない」と大野さん。

 一方、コロナ禍で改善したこともあった。大野さんは「宴会や飲食を控えるよう徹底した。酒や騒音のトラブルがなくなり、ごみも減った。来場者のマナー向上が図れた」と振り返る。

 幸手のシンボルともなっている権現堂の桜堤。桜そのものが老木化し、維持管理する保存会の運営も苦境に立たされている。先行きが見えないコロナ禍での花見に向け、保存会の悩みは尽きない。大野さんは「この状況が続けば大丈夫だと思うが、第6波が来るとそうはいかない」と話した。

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