埼玉新聞

 

俳優・山本耕史さん、荻野吟子の生誕地でロケ 日本初の女医の映画、熊谷などで撮影 地元児童も出演

  • 映画のロケで志方之善役の山本耕史さん(中央)と共演する秦小の児童ら=27日午前、熊谷市俵瀬

 日本初の女医荻野吟子(1851~1913年)の半生を描く映画「一粒の麦 荻野吟子の生涯」(山田火砂子監督)の撮影が、4月から県内などで行われている。27日には吟子が生まれた熊谷市俵瀬でロケがあり、地元の子どもたちもエキストラとして出演。郷土の偉人への理解を深め、映画の完成に期待を寄せた。

 映画は、男尊女卑の時代に公許女医第1号となった吟子の生き様から、不屈の精神や深い愛情を感じてもらおうと企画された。吟子役は若村麻由美さん、伴侶でキリスト教伝道師の志方之善役は山本耕史さんが演じる。14日にクランクインした。

 熊谷市俵瀬で撮影されたのは、1891年の濃尾地震で被災した孤児たちを志方が引き取り、吟子が開業した東京の医院まで連れ帰る途中のシーン。孤児役の20人のうち15人を熊谷市立秦小学校の1~6年生の女児が演じた。山本さんに先導され、破れた着物と草履で畑道を歩き、当日決まった合唱もこなした。

 6年生の舞原京和(きよの)さん(11)は「昔の人を演じるために髪を崩し、古い衣装を選んだ。今までの人生で一番緊張したけど、うれしかった」と声を弾ませる。将来は看護師になるのが夢で、「吟子さんのようにたくさん努力してかなえたい」。

 「自分だったら生きていけないと思った」。同じ6年生の門倉亜子さん(11)は、被災した孤児を取り巻く過酷な環境に驚いたという。今の生活がいかに恵まれているかを実感し、「映画が完成したら、家族と一緒に見に行きたい」と目を細めた。

 俵瀬でのロケは一度きり。山本さんは「熊谷は暑いイメージがあったけど、吟子さんが生まれた場所の空気を感じながら、気持ちよく撮影できた」と感想を語った。

 撮影はこれまで熊谷市や深谷市、利根川を挟んだ群馬県千代田町などで行われ、各地の名所旧跡も登場する。5月中に終了し、9月に公開される予定。

 製作元の現代ぷろだくしょんでは、映画製作費に充てられる協力券を1200円(通常のチケットは当日1800円)で販売している。山田監督は「荻野吟子という立派な女性を生み出した埼玉の皆さんにぜひ見てもらいたい」と呼び掛けている。

 問い合わせは、現代ぷろだくしょん(電話03・5332・3991)へ。

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