埼玉新聞

 

外資の参入は「明るい未来」の到来か「黒船」の襲来か レッドブルが買収したJ3大宮 Jリーグで単独の海外オーナーは初 来季から「RB大宮アルディージャ」 上昇へ「翼」を授かるか 前例なき挑戦

  • チームロゴを発表した(左から)レッドブルのマリオ・ゴメス氏、オリバー・ミンツラフ氏、大宮の原博実氏=6日

    チームロゴを発表した(左から)レッドブルのマリオ・ゴメス氏、オリバー・ミンツラフ氏、大宮の原博実氏=6日

  • チームロゴを発表した(左から)レッドブルのマリオ・ゴメス氏、オリバー・ミンツラフ氏、大宮の原博実氏=6日

 日本サッカーの未来を左右する挑戦になりそうだ。このほど、J3大宮がオーストリアの大手飲料メーカー、レッドブルに買収され来季から「RB大宮アルディージャ」とチーム名を変えて歩みを進める。発足から31年が過ぎたJリーグで、海外企業が単独オーナーとなるのは初めて。来季はJ2で戦うクラブにとって外資の参入は「明るい未来」の到来か、それとも「黒船」の襲来か。

◆突然の株式譲渡

 J3で首位を独走していた大宮に突然湧き上がった「買収」のうわさ。交渉は水面下で進められ、8月6日にレッドブルへの株式譲渡が正式に発表された。10月1日から社名を「RB大宮株式会社」に変更し活動を開始。新会社の代表取締役に就任した佐野秀彦社長は「サッカー界を背負うような覚悟で、これを成功につなげていきたい」と背水の決意を述べた。

 レッドブルは、世界中のアスリート約800人をサポートしている。モータースポーツをはじめ、自転車のBMXやスノーボードなどのエクストリームスポーツなど約60種類のスポーツに資本提供を実施。2005年に自国の現レッドブル・ザルツブルクを買収しサッカーの運営に本格参入した。現在はオーストリア、ドイツ、米国、ブラジルのチームを傘下に置いている。

 ドイツのRBライプツィヒは、09年に当時5部だったチームを買収し、8年かけて1部に上り詰めた。今季もリーグで2位(16日現在)につけるなど、国内での地位を固めている。

◆減少の人件費

 18年にJ2に降格した大宮は、同年にチーム過去2番目に高い19億1500万円の人件費を投じて1年でのJ1復帰を目指した。だが、2年続けてプレーオフで敗退すると、以降の成績は右肩下がり。熱量が冷めていったかのように人件費は年々減少の一途。22年には前年から7億7100万円減の5億8300万円まで落ち込んだ。戦力補強は後手に回り、22年にJ3降格瀬戸際の19位でシーズンを終える。23年は7億9200万円まで人件費を増やしたが狂った歯車はかみ合わず、屈辱のJ3降格を味わった。

 サッカー部門のテクニカルダイレクターを務める元ドイツ代表FWのゴメス氏は「J2で10年もプレーする気はない。早いうちにチームを強くしてJ1に上がりたい」と目標を示した。巨大グループ傘下に入り将来的な成功が約束されているように映るが、07年から経営していたアフリカのレッドブル・ガーナは、13年に経営権を手放すなど失敗と呼べる例もある。

◆将来像に影響

 アジア戦略として大宮に白羽の矢が立った形だが、低迷するクラブにとっては渡りに船だった感もある。レッドブル・ゲーエムベーハーのミンツラフ最高経営責任者(CEO)は「私たちは、このチームに大いなる可能性を見いだした。大宮が歩んできた道を継続するとともに、チームとさらに上を目指すという大きな目標を持っている」と期待を込める。

 10月13日に来季のJ2昇格を決めると、翌週にはJ3優勝も果たした。日本のトップチームを目指す「新生大宮」は翼を授かるのだろうか。日本で前例のない挑戦の成否は、Jリーグの将来像に大きな影響を与えるだろう。

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