作家たちの晴れの舞台、日本版画会展を開催にこぎつけ 独学で版画始めた7代目会長、本3冊が“師匠”
東秩父村在住で、日本版画会会長の高野(こうの)勉(つとむ)さん(73)は「版画芸術」の活動を通じて、文化の振興や国際交流などに貢献している。
日本版画会は1960年に結成。初代代表(当時の肩書)は20世紀の美術界を代表する画家で、版画家の棟方志功。現在、全国8支部、会員・準会員・会友約250人を誇る。高野さんは7代目会長だ。
1983年、地元東秩父の特産の和紙に誘(いざな)われ、独学で版画を始めた。買ってきた本3冊が“師匠”だ。「1年後には個展」との目標を立てた。翌年、当時の大宮市(現在のさいたま市)のギャラリーで実現した個展が好評で、その会場にあった専門誌「版画芸術」に日本版画会展の告知があり、3点出品、うち2点入選したのが縁だ。その16年後には、会員に推挙された。
2008年、「大地の詞」が日本版画会賞、15年には「祈り」で、最高賞の文部科学大臣賞を受賞。日本版画会事務局長を経て、17年から会長を務めている。
コロナ禍。一昨年秋、東京都美術館の「第61回日本版画会展」は休止を余儀なくされた。昨年、2年連続の休止では「創作の炎が消えてしまう」と開催を決意。幸い感染数者も大幅に減少傾向を示し、講演や実演などのイベントを中止するなど、感染対策を万全に施し開催にこぎつけた。「最悪の場合は図録だけでも発刊したいと考えていたが、多くの皆さんの協力で実施できた」と振り返る。
2004年から、版画家仲間らと地元の東秩父村和紙の里を会場に全国公募展「版画フォーラム」を立ち上げ、海外でもパリ展、ギリシャ展、ウィーン展などを開催してきた。また、13年に工房「かみぐら」主宰、15年には創作情報誌「HANDJAPAN」を創刊、これまでに20号を発行している。「展覧会は作家たちにとっての晴れの舞台。参加して『幸せだ』と思ってもらうのが何よりの喜び」と話す。