「まちの魅力高めるハブに」 今年9月オープンの大型商業施設「エミテラス所沢」 懸念の交通渋滞が起こらず、駅の乗降者数が増 周辺施設にもプラス効果 今後は「多角的に取り組み、沿線の価値をさらに高めてく」
今年9月、所沢駅西口前の西武鉄道車両工場跡地に市民待望の大型商業施設「エミテラス所沢」がオープンした。「ベッドタウンからリビングタウンへ」をテーマに掲げる所沢駅開発の集大成となる施設が完成し、今後の展望について西武リアルティソリューションズの斉藤朝秀社長(58)に聞いた。
―エミテラス所沢開業の反響は。
「予想を大きく上回り、極めて高水準で推移している。駅から人の流れができて、西武所沢S.C.やグランエミオ所沢といった周辺施設にもプラス効果が出ている。懸念していた周辺道路の交通渋滞が起こらず、駅の乗降者数が増えた。商業施設として120点の滑り出しになった」
「所沢エリアの開発は一区切りとなるが、私どもとしては開業からがスタート。今後は単なる商業施設でなく、まちの魅力を高めるハブにしていく必要がある。周辺の魅力的な施設に人の動きを促し、まち全体のネットワークを強化していく、タウンマネジメントに注力したい」
―まちづくりをどう考えるか。
「中長期的には、西武新宿線の連続立体交差事業が進んでいるので、東村山駅周辺で開発対象エリアができてくる。住宅地に囲まれる中で、郊外型の高架下にはどういうものがあったらいいかを考え、チャレンジすることが大事だ」
「西武鉄道沿線は地盤が強く、防災に強いエリアという特色もある。他の沿線と差別化し、利点を生かして不動産目線で何かできないかと議論している。『西武の沿線ってこうだよね』という特色をより出していくことを考え続ける」
―沿線の価値を高めるための戦略は。
「飯能から秩父は今も非常に魅力的な緑があふれるエリア。例えば吾野エリアはかつて、ハイキングコースとして多くの人でにぎわった。今後も西武鉄道とともに、都心に住んでいる人たちの週末のちょっとした旅行の目的地として、より魅力を高めていくことも大事なミッションだ」
「沿線にはいろいろな志を持つ人たちが宝物としていらっしゃる。そういう人たちと一緒に沿線の価値を上げていきたい。(社内では)ここ数年、沿線の企業に伺って、新しい出会いをつくろうという流れがある。これからも能動的に沿線の企業に『西武がお役に立てませんか』と問いかけをしていく」
―社としての展望は。
「5月に不動産事業を核とした西武グループの持続的な成長を実現するため、従来の保有前提のビジネスモデルから保有型ビジネスと不動産回転型ビジネスの両輪で成長するビジネスモデルへ転換を図ることを表明した。そして、新たに資産を取得しバリューアップ投資を行う事業も既にスタートした」
「当社としては、不動産投資のリターンをしっかり得てまた次に投資していくことが大切だが、そこに西武線沿線の魅力向上というミッションを重ね合わせ、多角的に取り組むことで沿線の価値をさらに高めていきたい」
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さいとう・ともひで 静岡県伊東市出身。1990年3月に東大大学院を修了し、同年4月に住友信託銀行に入行。オリックス、昭和地所などに勤務し、2007年に西武ホールディングスに入社。09年に西武プロパティーズ(現西武リアルティソリューションズ)に出向し、開発企画部長、賃貸事業統括部長などを経て、22年6月から現職。