駅前のシンボルと別れ イトーヨーカドー春日部店が閉店 アニメ「クレヨンしんちゃん」に登場する「サトーココノカドー」のモデル しんちゃん効果で海外からファンも訪れ 跡地利用は「交渉中」
東武春日部駅西口のにぎわいを創出し、半世紀にわたり親しまれてきた春日部市中央1丁目の総合スーパー「イトーヨーカドー春日部店」が24日、閉店した。人気アニメ「クレヨンしんちゃん」に登場する「サトーココノカドー」のモデルとしても知られる有名店。営業最終日、大勢の市民らが来店し「駅前のシンボル」との別れを惜しんだ。
イトーヨーカドー春日部店は1972年に開店した。96年、現在地に移転。地下1階、地上5階建ての店舗で食品や衣料、雑貨などの商品を販売してきた。駅周辺の商業をけん引する核店舗の役割を担ってきたが、ショッピングモールが増えるなど競争が激化する中、旧店舗時代を含め52年の歴史に幕を下した。
クレヨンしんちゃんの聖地としても愛された。2017年には期間限定で店舗看板のデザインをヨーカドーのハトからココノカドーのコウモリのマークに変更。遊び心たっぷりの演出で話題を呼んだ。店舗3階にはぬいぐるみやクッキーといったコラボ商品が並び、埼玉ゆかりのアニメや舞台地を紹介する県物産観光協会の「アニメだ!埼玉発信スタジオ」も入っていた。
「春日部の街を見守ってくれてありがとう」「寂しいですが、心の中でずっと営業してます」。大きなハトとコウモリのマークが並ぶ店舗5階。来店客が寄せたメッセージカードが壁を埋め尽くし、地域にとって不可欠な存在だったことを物語った。
しんちゃん効果で海外にも名が知られていた。来館者の半数を外国人観光客が占める駅前の観光案内所「ぷらっとかすかべ」には閉店が発表された7月以降、「なくなる前にヨーカドーを見に来た」と話す外国人ファンが急増したという。
営業が終わる24日午後7時前、大勢の来店客らが店舗前に集まった。最後のシャッターが静かに下りると、「ありがとう」と拍手が湧き起こり、店舗内にいた従業員が窓ガラス越しに手を振って応えた。
しんちゃんの絵はがきセットを購入した市内の主婦(64)は「20年以上前からお世話になり、感謝の言葉を伝えに来た。春日部のシンボルがなくなるのは寂しい」と話した。洋服を目当てによく利用していたという市内の男性(73)は「会社員時代は駅前に来た時、必ず寄っていた。最後にお別れを言いに来たが、心に穴が開いたような感覚」と名残惜しそうに語った。
■跡地利用は「交渉中」
イトーヨーカドー春日部店の閉店による市民生活への影響について、春日部市は定期的に店側から状況を確認している。従業員の雇用は近隣店舗に引き継がれるほか、ハローワークも説明会を開くなどして再就職を支援。跡地利用に関しては、店側から「交渉はしている」と説明を受けているという。
閉店に伴い夜間に周辺が暗くなり、人流の減少が予想されることから、市は防犯面からも看板の点灯を継続してもらうよう店側に要請。周辺店舗の集客にも影響が及ぶことを懸念し、「春日部商工会議所、地元商店街と連携して必要な対策を講じたい」としている。
市は「まちの案内人」と「子育て応援キャラクター」として、「クレヨンしんちゃん」を任命。作品とのコラボ商品などを豊富に取りそろえていた店舗は重要な聖地の一つとして、市のPRにも貢献していた。
岩谷一弘市長は20日の定例記者会見で「世界中からも多くの方が訪れるスポットになっていた。50年以上にわたり市民の生活や雇用などを支えてきた功績に敬意を表し、深く感謝を申し上げます」と述べた。