埼玉新聞

 

驚き!憩いの場の樹木、突然伐採 周辺の安全を第一…埼玉・蓮田市が工事 「緑残して」住民ら再考求め署名

  • 工事が進められている黒浜緑地の整備事業=蓮田市藤ノ木

 蓮田市藤ノ木で、「黒浜緑地」として古くから親しまれている斜面緑地帯の樹木が、市の整備事業で昨年秋から伐採され始めた。市側は木が大きくなり、日照や倒木など周辺住民の生活への影響や安全を第一に考えたとしているが、慣れ親しんできた緑地がコンクリートで固められることに、周辺住民から反対の声が上がっている。市の新年度予算には残りの工区の事業費が盛り込まれる予定で、住民は7日までに署名や請願、要望書を市や市議会に提出し、再考を求めている。

 黒浜緑地はJR蓮田駅東口から約1キロの、元荒川の近くに広がる約1万1千平方メートルの緑地帯。周辺は市が1970年代に区画整理して宅地開発を進め、高台から低地に向かう斜面部分が帯状の緑地帯として残った。緑地は公園や神社が隣接し、遊歩道があり、地域の憩いの場となっている。道祖神や地蔵も点在しており、古くから地域に根付いてきたことが分かる。

■緑が良くて引っ越し

 そんな緑地の木が昨年秋、突然伐採され、住民から驚きの声が上がった。近くに住む画家の久住敏之さん(70)は94年、緑が間近にある環境を気に入り、市の公売で土地を購入した。「30年親しんだ緑が根こそぎ取られた。住民に説明も相談もなく、こんなにあっさりという気持ち。緑を大切にしようというこの時代に許されない」と憤る。

 藤井毅さん(38)と妻の彰乃さん(34)は「この緑が良くて」と昨年11月に県南部から転居してきた。計画を聞き、地域住民にアンケートを実施したところ、多くの住民が工事の計画を知らされず、緑を残してほしいと望んでいることが分かった。

 久住さんと藤井さんは、「失われた緑を回復してほしい」と計画の見直しを求め、それぞれ署名を集めた。地域住民の署名は計120を超え、請願書や要望書を市と市議会に提出した。

■事前説明設けず

 市みどり環境課によると、工事は昨年秋から緑地の樹木を伐採し、のり面をコンクリートで固めるというもの。整備の対象は約1万平方メートルで、四つの工区に分け、久住さん方に近い工区から工事を開始。残りの3工区についても、新年度の予算で順次進める予定。事業費は全体で総額3億円近くに上る見込み。

 整備事業について同課は「木が大きくなり、落ち葉が隣接する住宅の雨どいに詰まったり、日照を遮ったりしている。風や雨の強い日は木の枝が倒れ民地に入る。(地域住民の)安全を第一に考えている」と理解を求めるが、工事について住民や自治会に事前に相談や説明の場は設けていなかったという。

 藤井さんは整備事業が住民への説明が必要な国の交付金を受けている点などを挙げ、「住民に全く説明なく、市のやり方はあまりにも安易。広く民意を反映すべきで、計画を見直し緑の保全と安全確保の両立を求める」と訴えている。

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