埼玉新聞

 

ファンタジー空間、秩父の旅館に出現 宇宙船をイメージした「洗面所」が幻想的、SNSフォロワー増加中

  • 宇宙船内をイメージした「未来型パウダールーム」を紹介する前川拓也支配人=秩父市野坂町の旅館・比与志

 秩父市野坂町の旅館・比与志の共同洗面所が、宇宙船内をイメージした「未来型パウダールーム」に改装された。同旅館支配人の前川拓也さん(47)が、コロナ禍の感染症対策に面白い工夫を取り入れようと、1月にSF映画さながらのファンタジーな空間を完成させた。前川さんは「長引くコロナ禍でも、安心で快適な宇宙に出発する気分で、より多くの人に秩父旅を満喫してほしい」と話す。

 北九州市出身の前川さんは、日大芸術学部卒業後、フリーのCM制作、助監督、ロケコーディネーターとして700本以上の映像作品に携わってきた。35歳で秩父市に移住し、祖母が開業した同館で7年ほど前から宿泊業に従事している。

 築58年木造建築の館内は、トイレや洗面所、風呂場が各部屋になく、開業時から共同使用の形式を取っている。「共同の水回りは、感染症対策としてデメリットになってしまう。弱みを強みに変える対策が必要」と、前川さんは昨年5月から未来型パウダールーム「STAR・SHIP」の設置を計画した。

 1960年代のSF映画をヒントに、デザイナーと打ち合わせを重ね、「住空間として捉えた宇宙船」を構想。照明の配置やデザイン、外壁の色、飛沫(ひまつ)防止のカーテンなどにこだわりながら、白を基調とした、幻想的で清潔感のある宇宙船内に仕上げた。「宇宙船は、ウイルスを全く持ち込ませない清潔感の極致」と前川さん。

 パウダールームの他、館内各所に「STAR・MIST」「STAR・GATE」などと名付け、和と宇宙を調和。自分らしい旅を求める25~35歳の女性が、気持ちよく利用できる仕掛けを館内全体にほどこした。

 前川さんは「SNSの情報発信では、秩父地域の祭りや観光スポットなどを定期的に紹介し、フォロワー数が1万人を超えた。今後も面白い取り組みを続けて、新時代に合った、地域の観光振興に取り組みたい」と語った。

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