「魚かわいい」と感動 埼玉・富士見の湧水路で生き物調査 近くには県内最大級の「ららぽーと」もある地域 市民団体が中学生と魚捕りに挑戦
富士見市山室地区の自然湧水路が合流する図川で、埼玉県魚類研究会と地元の市民団体「山室湧水路の清流プロジェクト」による生き物調査が行われた。地元の市立勝瀬中学校(内海幸一郎校長、生徒数698人)の生徒ら25人が参加して魚捕りに挑戦。希少種の生き物も発見し、生徒たちは「かわいい」「初めて魚をつかんだ」と感動していた。
■ガサガサ
生徒は手持ち網を使う「ガサガサ」と呼ばれる方法で魚を捕まえた。網の使い方を、同プロジェクト代表の守山義一さん(78)や埼玉県南部漁業協同組合会員の佐藤正康さん(38)が教えた。
「警察用語でガサ入れというでしょ。網を川底に立てて、左足で誘い込む。魚の気持ちになってみよう」と守山さん。説明を受けて実践した1年生の福田凛乃さんは「とても面白い」、佐藤聖音さんは「生き物に触れてみたかった」と笑顔。広橋龍樹さんは「穴に手を入れたら何かいた。急いで網ですくったんだ」と大喜びで、捕まえたのはウキゴリだった。同校で理科を教える栢本未穂教諭(33)と一緒に来た幼稚園児の真吾さん(6)は「このエビ持って帰るんだ」と笑顔だった。
■絶滅危惧種
この湧水路は県のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されているホトケドジョウが生息する。湧水は約1キロ下で図川に合流する。
指導した埼玉県魚類研究会代表の金沢光さん(71)は「秋に生まれたホトケドジョウの稚魚は2~3年で5~6センチの成魚になる。小さなころに東京湾から上がってくるウキゴリなどの大きな魚たちに食べられる心配がある」と危惧する。湧水路から流れ落ちたホトケドジョウの確認と保護が今回の調査目的だが、捕まらなかった。しかし希少種ミナミメダカやカワムツ、ウキゴリ、ドジョウ、スミウキゴリ、オイカワ、ヌマムツ、モクズガニなど10種を確認した。
■湧水と小川
図川近くのショッピングモール「ららぽーと富士見」は県内最大級の規模で、敷地面積約16万平方メートル。2012年9月に造成が始まり、15年4月に開業した。「ここは、かつては広大な田んぼで、図川は今のようにコンクリート護岸ではなくて、僕ら子どもの楽園だった。いろんな魚がいっぱい。実は私は、この水辺で育ったんです」と昔を振り返る内海幸一郎校長(56)。
モールの工事が進む傍ら、守山さんは図川のメダカ保護に取り組み、15年に見たことのない魚2尾を捕まえた。金沢さんは「ホトケドジョウです。しばらく内緒にしましょう」。その3年後の18年に県が絶滅危惧種に指定した。
金沢さんは「湧水環境は年々悪化し、絶滅への心配度は増している」と警鐘を鳴らす。子どもたちとの生き物調査を通じて守山さんは「貴重な自然遺産の湧水路とホトケドジョウを守り、子どもたちに未来を託したい」と願いを込めて話していた。