<新型コロナ>状況が一変した学校、試行錯誤の日々…授業を中継、年度末までに教育課程を修了させなければ
新型コロナウイルス感染拡大の「第6波」は依然として予断を許さず、「まん延防止等重点措置」は県内全域で3月6日まで延長された。昨年夏の「第5波」までとの違いは、子どもたちへの感染が前例のない広がりを見せていること。2月も半ばを過ぎ、学校では感染を防ぎつつ年度末までに教育課程を修了させなければならない。川越市内の教育現場では、試行錯誤しながら状況に対処している。
給食の準備が始まると、児童が一斉に机の向きを変えだした。教室の半分は窓側へ、残りは廊下側に。配膳が終わり、いよいよ食事の時間。だが会話は聞こえず、教室の中央で背中合わせとなって整然と2方向に分かれ、黙々と箸を動かす。
川越市立南古谷小学校の馬場雅史校長(50)は「以前は全員が同じ向きで黙食していたが、感染リスクをより減らすため、2学期からセパレートにした」と説明する。机を向かい合わせてグループをつくり、にぎやかに昼食を楽しんだコロナ前の光景は、今では想像できない。
市東部に位置する木野目の市立南古谷小学校。最寄りのJR川越線南古谷駅周辺では近年、大型商業施設の整備などに伴い人口が増え、市内小学校で最も多い1068人の児童が在籍する。2021年度のコロナ感染児童は、「第5波」にあってもゼロだったが、年が明けると状況が一変。次々と陽性が報告され始めた。
市教委は国や県が示した基準より厳しく、クラスに1人でも感染者が確認されれば5日間の学級閉鎖を行う方針だったこともあり、全34クラスのうち8クラスで学級閉鎖が行われた。2月10日以降は基準を国や県に合わせて複数人発生した場合になったこともあり、17日現在は学級閉鎖は全て解除されている。
だが、制限された中での学校生活は続く。対面や身体接触、飛沫(ひまつ)が出る活動は禁止。音楽の授業では歌や笛の指導はできず、打楽器の演奏や全員に支給されているタブレット端末のアプリを使った鍵盤の練習に置き換えられた。体育のバスケットボールでは、ドリブルなしのパスだけのゲームを行っているという。
また、家族に感染者が出るなどして登校を自粛している子どもたちを対象に、教室の授業をオンラインでも同時中継している。馬場校長は「これまで以上に感染対策を徹底している。工夫しながら、何とか学びを止めないようにしたい」と言う。
2月上旬に学級閉鎖となった6年生のクラスを担任する宮坂昇吾教諭(34)は、年度内にカリキュラムを終えられるよう、オンラインで授業を進めた。「昨年秋の修学旅行も1泊から日帰りに短縮され、子どもたちはがっかりしたはず。これからクラスで手作りの行事を企画するなどして、不自由な中でもたくさんの思い出をつくって卒業を迎えてほしい」と心を砕く。
小林沙月さん(12)は「学級閉鎖の間は、友達に会えなくてつらかった。端末のチャット機能などでグループ活動の話し合いをしたりするけれど、伝わらないこともあって難しい。残りの日は、できるだけみんなとおしゃべりして過ごせればいいな」と願った。
市内には小学校32、中学校22、特別支援学校1、高校1の計56校の市立学校があり、昨年5月1日現在で約2万7300人の児童、生徒が在籍する。市教委によると、今年に入って13日までに児童、生徒732人、教職員28人の計760人が新型コロナウイルスに感染。14日までに小学校は31校158クラス、中学校で21校63クラスが学級閉鎖となり、学年閉鎖や臨時休校が行われた学校もある。
市教委は独自に3段階の対策レベルを設定。1月25日から最も制限が厳しい「レベル3」に引き上げ、感染防止策を取っている。現在は中学校の部活動が全て停止され、昨年秋の新人大会の代替として予定していた運動部の市内大会も取りやめとなった。