一貫性なく選手困惑 チーム支えた渡辺の奮闘 今季13位に終わったJ1浦和 監督を途中解任、主力の流出続き波が激しく<攻の強化 守の後退・下>
浦和の今季の成績は12勝12分け14敗の13位。優勝を目指していたチームとしては、ファン・サポーターを大きく失望させる結果になった。一年を通して安定しない戦いぶりに、主力選手の流出、監督の交代、レジェンドの帰還など波が激しいシーズンだった。
■スコルジャ監督の復帰
後任監督の発表は大きなインパクトとともに期待感を一気に押し上げた。ヘグモ前監督と入れ替わったのはスコルジャ監督。昨季チームに堅守を築き、3度目となるアジア・チャンピオンズリーグのタイトルをもたらした人物だった。
チームの慰留に対して家庭の事情で退任していただけに、数カ月での復帰は衝撃的だった。スコルジャ監督は「早い段階で、ピッチ上でもいろいろと判断しながらポジティブに戦えるチームになっていきたい」と意欲をみなぎらせた。
加えて、クラブの一時代を築いた原口元気(熊谷市出身)の復帰も発表。立て直し初戦となった9月14日のG大阪戦は、1点を守り切るスコルジャ監督らしい試合運びで勝利。リーグ7戦ぶりの勝ち点3に、ファン・サポーターは終盤戦の「反撃態勢」に沸き立った。
昨季見せた安定した戦いを期待するのは当たり前だったが、結果的に指揮官は「魔法使い」ではなかった。一度落ち込んだチームを立て直す作業は容易ではなく、就任後は3勝3分け5敗。守備はある程度修正されたが、一時は残留争いに巻き込まれるなど、苦しい戦いが続いた。
戦術スタイルの大きな変更が、選手たちに戸惑いを生んだのは事実だろう。攻撃には多少の自由が許されたヘグモ監督から、細かなパス重視のスコルジャ監督への変更。急な方向転換は、クラブの一貫性のなさが招いた弊害でもあった。
■チーム支えた渡辺の奮闘
数少ないポジティブな話題に目を向けると、加入1年目の渡辺(東松山市出身)がチームの中心選手として活躍。開幕後は、左サイドバックにコンバートされたが、ウイング、ボランチ、トップ下とあらゆるポジションで躍動した。
チーム唯一の公式戦全試合に出場した渡辺は「まだやらないといけないことが多い。ボランチもサイドバックもできないといけないし、(シーズンが)あっという間に感じた」と満足はしていない。それでも、背番号13の存在がなければ、さらに厳しいシーズンになっていたはずだ。
来季は6月から始まるクラブワールドカップ(W杯)、今季出場できなかった天皇杯にも参加する。浦和は今オフで「個の力で局面を打開できる選手」の獲得を宣言。常勝への足固めができないシーズンが続いたが、今度こそ我慢が必要だ。現体制と心中する覚悟こそがクラブに最も求められる。