苦情が多い…駅近くにそびえる違法な残土の山 所有者は死亡、遺族は相続放棄 撤去費1億円は税金?批判が
宮代町国納で東武伊勢崎線和戸駅西側近くに盛られた残土が問題になっている。処理費用は1億円に上るとみられているが、土地所有者はすでに死亡し、親族は相続を放棄している。解消を求める地元の声が大きい一方、処理に税金を投入することへの反発もあり、町は対応に苦慮している。駅周辺の整備・活性化を見据える町は1月、処分に向けてさいたま家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てる手続きに踏み切った。
■苦情絶えず
和戸駅西側にそびえる残土の山は、約1千平方メートルの土地に住宅の2階ほどの高さまで土が盛られている。中に何が入っているか分からないまま、四半世紀にわたって放置されてきた。
近くで畑に水やりをする70代男性は「駅に近いのにもったいない。何より見苦しい」、別の60代男性は「夏は雑草がすごく、ポイ捨ても多い。ここまで放っておいたのは行政の怠慢だ」と憤る。
町などによると、土地は農地で、かつて町内に住んでいた男性が所有。1995年ごろ、違法に残土が盛られた。当初、県が農地法に基づいて撤去するよう指導したが、男性は2003年に死亡したという。遺族は相続を放棄しており、相続人がいない状況が続いている。
地域の苦情を受け、やむを得ず、町が定期的に草刈りやごみ処理を続けてきた。町議会でも再三取り上げられてきたが、残土の処分費用は1億円に上るとされる。
地域住民は「(残土を)処理してほしいが、町の税金を使うのか」との声も。町幹部は「そのままにしておくわけにはいかないことは確か。補助金でもあれば別だが、民間の土地の問題に多額の町税を使えるのか」と嘆く。
■管理人を選任へ
東武伊勢崎線東武動物公園駅と久喜駅の間にある和戸駅は都心へのアクセスが良く、近くを通る県道さいたま幸手線(御成街道)と東武鉄道の立体交差が予定されるなど、利便性が高まっていることから近年注目が集まっている。
町は第5次総合計画で、周辺地域の活性化を目指す。新年度予算で土地利用や事業手法など協議するため、予算600万円を計上した。近くにある須賀小学校も老朽化が進み、児童数の減少を背景に再整備の対象となっている。
駅周辺の活性化に向けて、残土の処理は避けられない課題。町は家庭裁判所や弁護士と協議を続け、1月にさいたま家庭裁判所久喜出張所に相続財産管理人を選任するよう申し立てた。
今後、裁判所が選任した管理人が、公告を通じて相続人がいないことや債務などを確認する。町は、管理人が土地を売却する際に買い取るかなど対応を模索している。
ようやく処分への行動を起こした形の町だが、相続人の不存在を確認するのに、早くても1年はかかるとされる。違法残土の問題解決に当たる町民生活課は「周辺の方からの苦情も多く、総合計画を進める上で残土があのままでは障害になることは確か。早く処分できればよい」と話している。