埼玉新聞

 

涙、信じられない…最後まで笑顔だった男児、母ら埋める 暴力夫から逃げた母、怪しんだ保育士、動かない市

  • 5歳男児の遺体が見つかった住宅=6日、本庄市本庄

 本庄市で5日に住宅の床下に5歳男児の遺体を埋めたとして男児の母親ら男女3人が逮捕された事件を受け、男児が今年1月まで通っていた保育園が8日、取材に応じた。保育士らは亡くなった男児について「明るく元気で、とても優しい子だった」と語り、「どうしてこんなことになってしまったのか」と、やるせなさを募らせた。男児は死体遺棄容疑で逮捕された無職の男(34)らと同居を始めてから欠席が目立つようになり、1週間連続で登園しなかったこともあったという。保育園は水面下で何らかの問題を抱えている可能性があるとして、同市に対応を求めてきた。

 同園によると、男児が入園したのは2017年4月。当時0歳で最後の登園日となった今年1月12日までの約5年間、男児の成長を見守ってきた。男児は登園時、毎回笑顔で元気に「おはよう」と言ってくる子で、やんちゃな性格だったが、周りの友達にも優しく接する一面も。着替えの際などに行う身体チェックでもあざなどは見受けられず、病気などを患うこともなく、健康体だったという。

 保育士らは、男児が最後の登園の日まで変わった様子も見せず、最後まで笑顔だったことを振り返りながら、「(亡くなったことを)信じたくない」「私たちは擦り傷一つでも心を痛める。(男児の)命を守ることができなくて悔しい」などと、時折涙を浮かべながら苦しい胸のうちを明かした。

 県警や市によると、母親(30)と男児は昨年1月ごろから現場宅に転居していた。同園によると、母親は「以前同居していた夫からの家庭内暴力から逃れるため」と説明していたという。しかし「同居人に迷惑が掛かる」との理由で、同園に住所を伝えることをかたくなに拒んでいた。

 本庄市は6日に行った会見で「虐待の兆候は見られず、母子関係は良好で対応に問題はなかった」との認識を示していた。ただ同園は外見上は問題はなくても、水面下で何らかの問題を抱えている可能性があるとして、市に対応を求めてきたという。

 同園によると、男児は会話がかみ合わない時があったことや絵が5歳児にしては幼かったことなどから、発達の遅れか精神的な問題を抱えている疑いがあるとして、昨年9月に行われた5歳児検診時に心理士や保健師、市の福祉課に相談。熊谷児童相談所には心理的虐待がある可能性があることも報告していた。それでも市は「見守りをしてほしい」と同園に依頼するだけだったという。

 さらに、昨年9月にあった飲食店からの虐待を疑う通報後には、男児を保護できるか市に相談。しかし「母親から住所を教えてもらえない限り難しい」と言われ、その後も住所が特定されることはなかった。

 同園は母親との関係が悪化し、保育園に男児を連れてこなくなることを懸念して直接住所を問い詰めることもできなかった。市に何度も住所の特定と家庭内での実態把握を求めてきたが「なぜすぐに動かなかったのか。もっと踏み込んで対応してほしかった」と疑問を呈した。

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