埼玉新聞

 

5歳息子の遺体遺棄、知った日は足震え 現場宅の所有者、親子の移住知らず…賃貸契約時は高齢夫婦ら4人が

  • 男児遺体遺棄現場の住宅=6日、本庄市

 本庄市で住宅の床下に5歳男児の遺体を埋めたとして、今月5日に男児の母親ら男女3人が逮捕された事件から1週間がたった。現場宅の近隣住民や関係者らの証言で浮かび上がってきたのは、男児を取り巻く3人の複雑な関係性。現場宅の所有者は「事件を報道で知るまで親子の居住実態を知らなかった」と驚きを隠せない表情で取材に応えた。

■「仲の良い友達」

 事件は本庄市本庄3丁目の住宅の床下に5歳児の遺体が埋められていた。捜査1課と本庄署は今月5日、男児の遺体を遺棄したとして同所に住む男児の母親の派遣社員(30)、同居人の無職の34歳男(34)、同じく無職の54歳女(54)の3人を死体遺棄の疑いで逮捕した。

 県警によると、34歳男と54歳女は内縁関係。また、男児が通っていた保育園や男児の母親らが訪れていた飲食店関係者などの話によると、昨年1月ごろに2人が居住する現場宅に男児の母親と男児が移り住み4人で生活を共にしていたという。54歳女は訪れた飲食店店主に対して、男児の母親との関係性について「仲の良い友達」と話し、男児の母親は34歳男との関係性について、保育園へ「男児の面倒を見てくれている人」と説明していた。

 しかし関係者らは、男児は34歳男らと同居するようになってから保育園を休みがちになったり、飲食店で34歳男が男児を長時間叱責(しっせき)している様子を目撃するなど、その関係性に違和感を感じていた。県警は男児と男児の母親ら3人の関係性について、捜査を続けている。

■住宅所有者、賃貸手続き更新時に違和感

 現場宅の所有者の女性によると、現場宅の賃貸契約が行われたのは12年前の2010年2月。手元に残っていた契約書類などを参照したところ、当時は夫婦と思われる高齢の男女と、同じく夫婦と思われる40代の男女の計4人が住んでいたという。契約の更新は2年に1度で、最新の更新は今年の2月。事件が発生した直後だったと考えられる。

 女性は不動産業者を通じて手続き書類のやりとりをしていたが、居住人とは一度も顔を合わせたことはなかった。それでも「今思えば違和感を覚えたことがあった」と振り返る。

 女性によると、当初の契約者は4人のうち40代男性だったが、今から10年前の初回、もしくは8年前の2回目契約更新時には、契約者の名前が54歳女に変更され、保証人が34歳男になったという。54歳女から見た34歳男の続柄は婚約者だった。書類を受け取った時に女性は不思議に思ったが、当初住んでいた4人のうち、40代女性と54歳女の下の名前が一致していたことや、不動産業者からの報告がなかったことなどから「家族構成が変わっただけ」と詳しい話は聞かなかったという。

 しかし事件発覚当時、現場宅に住んでいたのは34歳男と54歳女、そして男児の母親と男児の4人。女性は高齢夫婦がいつ頃いなくなったのか、さらに男児と母親の親子が移り住んでいたことについても知らず、不動産業者もこのことを認識していなかったという。

 今回の事件を受けて「報道を初めて知った日は足の震えが止まらず、食事も喉を通らなかった」と話し「違和感をそのままにしていた自分にも責任があったのではないか」と涙を浮かべた。

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