埼玉新聞

 

涙で訴える姿に奮起 テレビから流れるウクライナの姿…埼玉・ふじみ野の中学生、千羽鶴で平和のメッセージ

  • 放課後に校内で折り鶴を束ねる作業に取り組む生徒有志ら=17日午後5時ごろ、ふじみ野市立葦原中学校

 「いろいろな人の支えがあるから今の生活があり、それに感謝したい」「これまでの平和が崩れた今、しっかり平和を発信していきたい」―。ロシア軍のウクライナ侵攻を巡り、平和のメッセージを送ろうと、ふじみ野市川崎、市立葦原中学校(今伊大校長、生徒数354人)の全校生徒らが約5千羽の折り鶴を作り、メッセージを添えて、23日から同市役所1階ギャラリーと市立図書館で順次、展示する。テレビで同じ子供たちが爆撃を受ける悲惨な状況を目の当たりにした生徒の有志らが「何かできることをしたい」と奮起。有志らの心に芽生えた熱い思いと訴えに全校生徒が応えた。

 今月3日、同校2年1組の生徒ら数人が「私たちの思いを聞いてください」と校長室をドアをたたいた。生徒らは「テレビから流れてくるウクライナの人たちが涙ながらに平和を訴える姿を見て、何か自分にできることはないか、と強く思い、クラスの仲間と訪れました」と訴えた。

 これを聞いた今伊校長は胸が熱くなり「人間が起こした醜い戦争は、人間の力でしか解決することができません。だから、粘り強く一緒に頑張ろう」と話した。生徒らと協議したうえ、市教委などと相談。平和へのメッセージと生徒らの千羽鶴を市役所などに展示することを決めた。

 生徒ら有志は9日朝、同校の各学年の全クラス(計11クラス)を回り、自らの思いと折り鶴の協力を呼び掛けた。これに応じた全校生徒らが翌10日から3日間、休み時間や放課後を活用。約5千羽の鶴を折り、2年生の有志らが折り鶴を糸でつなげるなど千羽鶴を完成させた。

 有志として活動した2年の下地頭所未桜さん(14)は「同じ子供たちが爆撃の被害を受けていることにショックを受けた。ウクライナの人に平和が戻り、笑顔になってほしい」、同じく2年の山中咲さん(14)は「日本は世界唯一の被爆国なので平和の尊さを訴える必要があります。紛争はウクライナだけでなく、これを機に平和を訴えたい」と訴えている。

 生徒らの行動について、今伊校長は「世界の戦争や紛争にしっかり向き合い、自ら考え、判断し、行動していくことが必要。生徒らの取り組みは砂の一粒のようなものですが、やがてその多くの粒が集まり地球全体に広がり平和を願う大きな力になると信じています」とたたえている。

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