埼玉新聞

 

素晴らしい行動力!中学生3人、教育長に直談判「子どもの権利条約を生徒手帳に載せて」 誰かを救えるかも

  • 子どもの権利条約に関する提言書を細田真由美教育長(右から2人目)に提出した(左から)伊藤菜穂さん、今川つかささん、林小桜さん=28日午前、さいたま市役所

 「子どもの権利条約を生徒手帳に掲載してほしい」。さいたま市立大谷場中学校2年の女子生徒3人が28日、市教育委員会の細田真由美教育長に提言書を手渡した。3人は「当事者である全ての子どもが条約を知ってほしい」と訴え、条約の四つの柱「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」について、全ての市立中学校の生徒手帳に載せる必須項目にすることを求めた。

 提言したのは、いずれも14歳の今川つかささん、伊藤菜穂さん、林小桜(こはる)さん。3人は今月、学校に許可を得てタブレット端末を利用し、条約に関するアンケートを実施した。同校2年生186人のうち164人が回答。条約を知っていましたかの質問に、「聞いたことがあり、内容まで知っている」は3人を含め5人(3%)にとどまり、「全く知らない」と回答したのは109人(66%)だった。

 3人はアンケート結果の内容を細田教育長に説明して、「当事者の子どもたちが知るべきなのに、ほとんど知らない現状があります」と指摘。コロナ禍で親の不安やストレスから子どもへの虐待が増加している恐れもあるとした上で、「私たちはこの現状に強い危機感を覚え、条約を知っていたら防げたものもあるのではと考えた」として、掲載を求めた。3人は提言後、「今後も学校でキャンペーンをして、条約の知名度を上げていきたい」と話していた。

 子どもの権利条約は1989年に国連で採択され、90年に発効。日本は94年に批准した。東京都世田谷区は当時小学6年の坂口くり果さんの提案をきっかけに、2019年4月から母子健康手帳に条約の掲載を再開している。

 今川さんは、「子どもには世界を変える力がある」を理念とするNPO「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン」の活動に参加。昨年12月、同団体を通して知り合った坂口さんから世田谷区の話を聞いて、「さいたま市でもできたら」と今回の活動を始めたという。

 細田教育長は「子どもたちに自ら考え、責任を持って行動を起こす力をつけてほしいと思っていた。3人の行動は素晴らしい」と高く評価。提案について、「3人が大きな一石を投じてくれた。とても大切なことだと思う」とした上で、「(教育長として)各学校に求めれば、思考停止になる。生徒らが議論をして、生徒手帳の掲載内容を決めるべき」と話し、今回の提言の内容について、各学校に伝えることを約束した。

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