埼玉新聞

 

標的は若者…悪徳業者から狙われる立場に 成人年齢引き下げで消費者被害の増加懸念、弁護士が注意喚起

  • 悪徳業者の標的に

 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が1日に施行される。少子高齢化を背景に自立心を植え付け、積極的な社会参加を促進するのが狙いで、親の同意なく自らの意思で契約が結べるが、一方で消費者被害の増加が懸念される。消費者問題に精通している埼玉弁護士会の竹内和正弁護士(38)は18、19歳の若者が悪徳業者の標的になりやすくなると強調し、「自分たちは狙われる立場だという危険性を理解、認識してほしい」と注意喚起している。

■自らの判断で契約可

 生活が大きく変わるのは、自らの判断で携帯電話や不動産賃借などさまざまな契約が結べる点だ。クレジットカードを作ったり、高額商品のローンを組んだりすることに親の同意は必要ない。ただ、若者は社会経験、知識、判断力が乏しいとされる事情を利用され、マルチ商法などの悪徳商法の被害に遭いやすいといわれている。

 県消費生活支援センターによると、2021年4月~今年3月24日に20~22歳から寄せられた相談件数(暫定)は1225件。そのうち、オンラインカジノやアフィリエイト(ネット広告手法の一つ)などの「他の内職・副業」に該当する相談が107件で最多だった。具体的な事案としては、友人から「オンラインゲームのアフィリエイトで稼げるから」と勧められた男性が、25万円の借金を背負い、「初期費用だと言われたお金を支払ったが、解約したい」と相談してきたという。

 また、同時期に18、19歳から寄せられた相談件数は401件(同)。架空請求などの「商品一般」に関するものと出会い系サイトなどの「異性交流関連サービス」に関するものが、24件で最多だった。

■未成年者取消権が失効

 これまで未成年者は民法で定める本人や保護者らが後で契約を取り消せる「未成年者取消権」によって守られてきた。しかし、民法改正により18、19歳の人は同権を失うことになり、これらの若者に目を付けた悪質商法の標的となることで、消費者被害が拡大することが危惧されている。

 消費者被害の未然防止や集団的被害回復などを行う「埼玉消費者被害をなくす会」副理事長の長田淳弁護士(52)は「18、19歳の人が大きな支払いを背負うトラブルが出てくる」と予想する。長田弁護士によると、消費者の被害相談は若者や高齢者、子育て中の女性からが特に多いという。その中で、若者は「社会経験が乏しかったり、将来への不安から被害に遭うのではと考えられる」と語る。

■事件化、トラブル懸念

 埼玉弁護士会では昨年11月10日、「民法の成年年齢引き下げの施行期日延期を求める会長声明」を発出し、警鐘を鳴らしてきた。同会消費者問題対策委員会の委員長を務める竹内弁護士は「一般的な法律相談に比べて、消費者被害問題は若い世代からの相談が多い」と声を大にする。

 竹内弁護士は、これまで未成年者取消権によって事件化しなかったものが今後、事件化したり、トラブルが拡大する懸念を指摘。学生が陥りやすいとされるマルチ商法は、一定期間は無条件で解約できるクーリングオフを適応するなど救済できる可能性もあり「188番(消費者ホットライン)に電話して相談を」と呼び掛ける。そして「消費者問題は予防が大事。現実に被害に遭うリスクが上がっていると認識した上で、慎重に行動を」と注意を促した。

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