いろいろな競技を掛け合わせ…スポーツの革命「ピックルボール」、米国やアジア中心に爆発的な人気 秀明英光高出の三好健太、プロ制度確立や普及活動にも力 人生懸け、未踏の道走る
パドルというラケットを使い、穴の開いたプラスチック製のボールを打ち合う「ピックルボール」というスポーツが米国、アジアを中心に爆発的な人気を博している。同競技で日本人選手の先駆者である三好健太(29)=秀明英光高出=は「本気で世界を目指すならトップを見たい。人生を懸けて世界を取りに行こうと思った」と未踏の道をひた走る。
埼玉県さいたま市出身の三好は5歳でテニスを始め、秀明英光高2年時に全国高校選抜大会で優勝。早大4年時には全日本大学選手権で準優勝した。卒業後、実業団でプレーし25歳で現役を引退。退社後の2023年10月に初めて競技に出合った。
卓球、バドミントン、テニスを掛け合わせたような種目に最初は単純な楽しさを感じた。元プロテニス選手の妻・吉冨愛子さんが強く興味を示したこともあり、24年3月に夫婦で再び本格的に競技生活をスタートさせた。
テニス時代に培ったフットワークや球への対応力などの経験が生きた一方で、なかなか試合で勝てない。「似ていると思ったけれどやればやるほど全く違う。今はテニスを一切忘れてプレーする」と相手との距離感が近づくことで、球の予測が難しく技術がいる競技に心をつかまれていった。
テニス競技で一度は諦めたプロの道。「あの時の悔しさ、後悔が世界で活躍したい、このスポーツで道をつくっていきたいという思いを支えている」と舞台を変え、テニスコーチとして働きながら毎日約3時間の練習を重ねた。
昨年3月から5カ国で14大会もの国際大会に出場。7月からは米国のピックルボールプロリーグ(PPA)5大会に挑戦し、11月にオーストラリアのメジャーリーグ(MLPA)に日本人として初出場する躍進を見せた。オーストラリアで開催されたPPAのツアーでは3位に入賞し、日本人として初の表彰台に立った。
同競技は数年前まで高齢者でも楽しめるスポーツという位置付けだったが、マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏や、起業家のイーロン・マスク氏など多くの著名人がプレー。バスケットボールNBAのレブロン・ジェームズ選手や、テニスの大坂なおみ選手がオーナーとしてチームに投資するなど注目を浴び始めた。
一方、日本ではまだ認知度は低い。国内でのプロ制度の確立や普及活動にも力を入れる三好は、海外遠征時にさまざまな競技施設を巡り発展のヒントを探る。昨年12月には東京と名古屋で初のクリニックを開催。「いろんな競技の掛け合わせでスポーツの革命だと感じている。今後、さまざまな種目から選手が参入してくる」と将来性に期待し、土台づくりに励む。
25年の目標に20以上の国際大会への出場を掲げた三好は、1月末からインドのプロリーグに夫婦で初挑戦する。4月から始まるMLPAでは日本人初のキャプテンに選ばれ「まずはそこで優勝したい。PPAでもメダルを取り、優勝するのが目標」と、最前線での活躍を誓った。
■ピックルボール
テニス、卓球、バドミントンの要素を併せ持つアメリカ発祥のスポーツ。バドミントンと同じ広さの専用コートで、パドルと呼ばれるラケットを使い穴の開いたプラスチック製のボールを打ち合う。年齢を問わず親しむことができる生涯スポーツで、2021年には米国でメジャーリーグが設立。日本ピックルボール協会によると米国での競技人口は約1千万人、日本は約2万人。