注文殺到いちご“あまりん”通販で売り上げ1位に 埼玉・深谷の農園男性「30分で千件以上の注文」今後は
深谷市黒田で観光農園「いちご畑花園」を経営する高荷政行代表取締役(61)。県オリジナル品種「あまりん」の栽培と通販に力を入れ、新型コロナウイルス禍でも過去最高益を更新。腰の高さに圃場を設置する高設栽培にいち早く取り組み、研修生を受け入れて後継者を育成するなど、埼玉の立地条件を生かした観光農園の発展と、県内の農業の活性化に心血を注ぐ。
旧花園町出身。熊谷農高を卒業し、1979年に農協に就職。直売所で働いていた際、秩父方面の帰り客から「この辺でイチゴ狩りができる所はないか」という要望が多かったことから、交通の便の良い花園地区で観光農業ができないかと模索。41歳で実家の農業を継ぎ、2002年にいちご畑花園を開園した。
08年には同志を集めて「養液いちご研究会」を発足。知識や技術の普及を推進するとともに、研修生を積極的に受け入れて、これまでに13人が独立した。研究会メンバーは昨年末時点で92人に拡大。功績が評価され、埼玉農業大賞のベンチャー部門優秀賞、農水省による全国優良経営体表彰の担い手づくり部門農林水産大臣賞を受賞した。
県が開発したあまりんについては、「誰が食べてもおいしいと言ってくれる。これ以上の品種に出合ったことがない」と絶賛し栽培を強化。収穫量が従来の品種より少ないため、値段は高くなるが、コロナ禍で通販を開始したところ、メディアで取り上げられた効果もあり、売り上げランキング1位を獲得。30分で千件以上の注文が殺到した。感染防止の観点からイチゴ狩りの客を約80%減らした一方、通販や直売のリピーターを着実に増やし、年間売り上げは約15%アップしたという。
今後は一般の消費者を地域に呼び込む観光農園スタイルに着目し、「埼玉は東京から近く人口も多い。都市近郊の立地条件を生かした農業をやらない手はない」と力説。「まだまだ埼玉は農業で伸ばしていける。後継者を育てながら農業全般を盛り上げていければ」と柔和な語り口と笑顔の奥に志の高さがのぞく。