浦和実、悲願の甲子園切符 やっと行ける…野球部OBらの喜びもひとしお 精肉店営むOB、コロッケやメンチカツを差し入れ 聖地を踏み締める後輩に期待「浦実の野球を見せて、欲を言えば校歌が聴きたい」
浦和実業学園高校の悲願の甲子園切符に、野球部OBの喜びもひとしおだ。家族中心に精肉店「肉の青木」=埼玉県川口市芝=を営む青木利克さん(45)は同校野球部の田畑富弘部長(45)と同級生で、時に母校のグラウンドを訪れコロッケやメンチカツの総菜を差し入れしている。昨秋の関東大会準々決勝は現地で観戦。完封勝ちし、甲子園出場を手繰り寄せた後輩たちの戦いぶりを誇らしく感じたという。待ちに待った吉報に、青木さんは「これまで(甲子園に)何回か行けそうで行けなかった。やっと行けるので率直にうれしい」と至福の表情を浮かべた。
青木さんは浦和実業学園高校卒業後、専門学校に通い、調理師免許を取得。21歳の時から実家の精肉店で働いている。朝6時から店頭で販売する総菜の仕込みを始め、朝昼夜に飲食店や定時制高校などに肉を配達し、仕事を終えるのは午後9~10時。そんな多忙な日々の中でも、母校の試合結果は常に気になり、インターネットでチェックしていた。
店は火曜日が定休日だが、「ここ5~6年は試合を見に行けていなかった」と青木さん。それが何かの巡り合わせか、昨年10月28日、事実上の甲子園出場が懸かった秋季関東大会準々決勝のつくば秀英(茨城)戦が、月1回ある店の月火連休の月曜日と重なったことから、野球部時代の同級生と横浜市保土ケ谷区の球場まで応援に駆け付けた。
現地には他に同級生が2人来ていた。試合は一、六回に1点ずつ奪って2―0で完封勝利。その瞬間は同級生らと大騒ぎで先輩、後輩関係なくハイタッチしたり、抱き合ったり。「興奮していてあまり覚えていない」と喜びは格別だった。大一番で浦和実らしい“守り勝つ野球”を体現した選手たちの姿に、「緊張しているように見えなかった。たくましい」と目を細めた。
青木さんは高校時代、公式戦には出場できなかったが、「すごく充実していた。チームメートとも仲が良く、野球が好きで楽しかった」と3年間を回想する。だからこそ、母校愛は今でも強い。時々、練習に打ち込む後輩たちに、コロッケやメンチカツを届ける。「この年代の子はすぐにおなかが減るし、いくら食べても太らない。少しでも栄養の足しにして、頑張ってもらいたい」。こんな思いからだ。
自身を含め、幾多のOBが立つことがかなわなかった聖地を踏み締める選手たちへ「投手が抑えて少ないチャンスをものにする浦実の野球を見せてほしい。欲を言えば1回は校歌が聴きたい」と期待を込め、「とにかく楽しんで」とエール。高校時代、共に汗と涙を流してきた田畑部長に対しては「何とか勝たせてあげてほしい」と言葉を贈った。