埼玉新聞

 

八潮の道路陥没…自宅、倒壊しないか…避難した住民ら、影響長期化に懸念「不安で押しつぶされそう」 節水の呼びかけ、県東部を中心に120万人に 高齢者施設、入浴の回数減に苦情も

  • 入浴室の入り口に貼られていた「入浴休止のお知らせ」の張り紙

    入浴室の入り口に貼られていた「入浴休止のお知らせ」の張り紙=31日午後、蓮田市蓮田の市老人福祉センター

  • 入浴室の入り口に貼られていた「入浴休止のお知らせ」の張り紙

 八潮市二丁目の交差点で県道が陥没し、トラックが転落した事故は31日、発生から4日目を迎えた。陥没してできた穴は直径約40メートルに拡大。消防は男性の救助活動を急いでいる。県東部を中心に約120万人に節水が呼びかけられ、事故が及ぼした生活への影響は長期化する懸念が出ている。避難した住民らは「不安で押しつぶされそう」「いつまで続くのか」と訴えている。

 ■自宅が心配

 市立八潮中学校体育館に避難する地域住民は31日で、避難から3日目を迎えた。陥没事故近くに自宅がある木下史江さん(55)は、避難を呼びかけられた29日に家族で避難した。「体育館はエアコンが効いている。食事の面でも不自由はない。ありがたい気持ちでいっぱい」と述べた。

 一方、避難の長期化が見込まれ、自宅が倒壊しないかなど心配は尽きない。「すぐ帰れると思っていたのに。気持ちの面では不安で押しつぶされそう」と表情を曇らせた。

 春日部市のマンションに夫と暮らす50代パート女性は、これまで毎日朝晩に行っていた洗濯を1回にした。入浴はシャワーにとどめ、温水が出るまでにためた冷水を洗濯に利用。台所の洗い物もなるべく控えている。「無理のない範囲で生活排水を出さないようにしよう」と心がけているが、ベランダで洗濯物を干す際、近所から頻繁だと思われていないか、つい気にしてしまうという。「この状態がいつまで続くか分からない。コロナ禍の『マスク警察』のように、他人に目を光らせる社会にならないか心配」

 春日部市の製茶販売会社は、店舗を訪れる客に出すお茶の容器を茶わんから、紙コップに替えた。1日100人以上をもてなすため、茶わんを洗う水も相当な量になる。「会社として、できることをやろうと考えた。少しでも力になれたら」と話した。

 ■入浴利用を制限

 八潮市内の高齢者施設では、「事故後、利用者が不安な気持ちを訴えている」という。大浴場の排水を遅らせ、次回の排水はバケツで植木にまく予定だ。食事もできるだけ紙皿で提供し、洗い物を減らしている。担当者は「まだ発見されていない方のことを思うと、私たちのことばかり言っていられない」と救助活動の進展を願った。

 別の施設では入浴の回数を減らしたところ「なんで入れないんだ」と苦情があった。「入浴を楽しみに通所している利用者もいる。県や市の要請に従ってできることはしているが、葛藤がある」と打ち明けた。草加市の介護施設でも節水の影響を受けた。30日は一部の入所者のみを風呂に入れ、31日には入浴を中止した。職員は「八潮の人はもっと大変だと思う。何か協力できることがあればしていきたい」と話していた。

 公共施設の利用を制限する動きも出ている。春日部市は高齢者福祉施設の幸楽荘、寿楽荘、大池憩いの家の3施設の浴場を、白岡市は老人福祉センターの浴場の利用を当面の間休止することを決めた。

 蓮田市の市老人福祉センターは29日から、入浴施設の利用を休止した。加藤菜穂子センター長は「1人暮らしで自宅で入浴が不安な方らが安心を感じて利用している。今回は申し訳ないが、理解していただいている」と話した。

 週4回、センターで入浴を利用していたという同市の無職男性(72)は、救出作業が続く男性運転手と年齢が近い。「早く助けてあげたいよね。穴もだんだん大きくなって」と心痛の表情を浮かべていた。

 八潮市内の保育園では、不安を訴える子どもはいないものの、交通規制の影響で職員や保護者に不便が生じているという。洗濯の回数を減らし、水道の緊急停止による濁り水を懸念して、水を数秒流して確認している。

 八潮市は31日から2月8日まで、市内老人福祉センター寿楽荘(同市木曽根)の風呂を該当する世帯の住人を対象に提供する。

 ■ガス復旧へ工事

 東京ガスは31日、ガスの供給を止めていた130戸のうち、中央2丁目、二丁目の一部計41戸のガス供給を再開した。供給を停止している二丁目と木曽根の一部地域計89戸の再開に向け復旧工事を進めている。同社は二次災害防止のため、同地点のガス管への供給停止を判断。交差点を通過しないルートでガスを供給する工事を進めている。

 NTT東日本埼玉支店は固定電話が利用できない世帯を対象に、「ワイヤレス固定電話」のサービスを無料で提供する。市役所に隣接する市民文化会館「八潮メセナ」敷地内に窓口を設け、申し込みを受け付けている。現在契約している電話番号をそのまま利用する。同社が貸し出す端末に自宅の電話機を接続すると、携帯電話回線を通じて固定電話が使えるようになる。同市鶴ケ曽根のエイトアリーナに臨時公衆電話を2台設置する。利用料は無料。

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