埼玉新聞

 

即死した兄、妹は足を切断…遊んでいたら砲撃が ジャーナリスト・安田さん、シリアで見た現実「伝えたい」

  • 紛争地や被災地に足を運び、現状を「伝える」大切さを訴えるフォトジャーナリストの安田菜津紀さん=4月24日午後、ふじみ野市福岡の「ふじみ野ステラ・イーストホール」

 紛争地域や災害の被災地などの取材を続けるとともに、避難民の支援などに取り組んでいるフォトジャーナリストの安田菜津紀さん(35)の講演会「子どもの人権について~取材から見えてきたこと~」が4月24日、ふじみ野市福岡1丁目のふじみ野ステラ・イーストホールで開かれた。安田さんは内紛が続く中東のシリアや東日本大震災の被災地などに足を運び、現地で生きる人たちの厳しい現状を報告するとともに、子どもたちの写真や取材を通して悲惨な状況を伝えることの大切さを改めて強調した。講演会はふじみ野市の人権教育推進事業の一環で、市民一人一人が自身の課題として人権尊重への理解を深め、差別や偏見のない街づくりを進めるのが狙い。

 安田さんは神奈川県出身。高校2年生の時、NPO法人「国境なき子どもたち」の派遣事業で、内戦を引きずっていたカンボジアを訪れ、「トラフィックチルドレン」と呼ばれる人身売買の子どもたちと過ごしたことをきっかけにフォトジャーナリストを目指したという。

 「周囲の大人に虐待を受けていた子どもたちに食事も出せない、お金もあげられない。治療もできない。そんな私に何ができるかを考えました。そして『伝える。知らせる』ことに行きついたんです。写真を通して多くの人と共有できれば、より良い考えが出てくるでしょう」

 シリアの戦争は「デモを政権が武力で鎮圧したのが始まり。ロシアが支援する政府軍と反政府軍、過激派との内紛で、約1千万人が難民となった」と説明。その上で「ウクライナでロシアが行ったことはシリアでも繰り返されており、『世界は関心を寄せてくれない』との指摘もある」と話した。

 シリアの現地取材で出会った8歳の女の子「サラちゃん」は病院で避難生活を送っていた。兄2人と屋外で遊んでいた際、砲撃を受けた。兄1人は即死、もう1人の兄は片目に重傷を負った。サラちゃんは右足を切断し、左足も手術などの治療を継続することが決まっていた。

 サラちゃんは日本人の安田さんにこう話した。「私たち子どもは何も悪いことはしていない。大きな人(大人)にこんなことはやめてほしいと伝えて」。安田さんは「私たち大人がどうしてこれを防げなかったのか。日本人に何ができるのか。一緒に考えたいんです」と提起した。

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