埼玉新聞

 

3年ぶり大凧あげ祭り、埼玉・春日部で開催 あす3日のみ 180年の歴史に涙「揚がったらすごい」

  • 大凧の骨組みを前に、「大凧あげまつり」に向けて意欲を語る春日部市「庄和大凧文化保存会」の川島栄会長(右)と横山利夫副会長

 春日部市の西宝珠花地区江戸川河川敷で毎年開かれる恒例の「大凧(だこ)あげ祭り」が3日、3年ぶりに無観客で開催される。新型コロナウイルスの感染予防対策を徹底し、市内企業の協力を得て万全の態勢で挑む。「庄和大凧文化保存会」の川島栄会長と横山利夫副会長は「伝統を守るため、必ず揚げたい」と意欲を燃やす。

 春日部の大凧あげは、江戸時代から伝わる伝統行事。上と下の二手に分かれ、約100人の引き手が綱を引き、土手の上から大凧を揚げる。大凧は縦15メートル、横11メートル、重さ800キロ。双方の大凧に描かれる文字は時代の世相を表す。

 2年前は「東京」「五輪」と文字を描き終わった時点でコロナの影響で中止が決まった。昨年は文字も描かずに中止に。地元で生まれ育った川島会長と横山副会長は子どもの頃から、5月のこの時期は、地元を離れたことがなく、断腸の思いだった。

 「180年の歴史を継ぐ大凧まつり。3年連続中止というわけにはいかない。伝承できない、伝統を守れなくなる」と川島会長。

 大凧の製作は毎年のことで体が覚えていた。骨組みは部位によって構造が複雑だ。竹を重ねるのは2枚か3枚か、縦と横、どちらが上か下か。ただ、2年連続で中止になり、骨組みの製作に戸惑う人もいた。

 1年がかりで感染予防の準備を重ね、今年は無観客での開催を決めた。当日は土手での立ち止まりを許さず、通行を促すため、土手の両岸に警備員を配置する。

 大凧あげは毎年5月3、5日の2日間にわたり開催される。初日に大凧が揚がらなかった場合、2日目への期待が増すため警備の難しさを考慮し、今年は3日のみの単日開催とした。

 準備や当日の引き手の体調管理にも苦慮した。準備を手伝う参加者は、マスク着用、体温管理を徹底し、ワクチンを2回打っていることを条件とした。

 例年、一般公募でなかなか人が集まらない引き手は、市内企業に応援を要請したところ、上下合わせて約200人を超える協力を得ることができた。2週間前から、体温測定と体調管理を依頼している。「市内企業に要請したところ協力を得ることができた。身元の確認ができる方にお願いすることを徹底する」と横山副会長。

 当日は、朝6時から準備を進め、午後、大凧あげに挑む。今年の文字は「春日部」「躍進」。前回の2019年は、新しい時代の幕開けを飾ろうと「令和」「元年」を描いた大凧が、風をつかみ見事に宙を舞った。

 川島会長、横山副会長は「あの時、大凧が揚がった時は感動で涙が出た。今回も揚がったらすごいことになる。伝統を伝承する、伝統を守るために必ず揚げたい」と語った。

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