空飛ぶ弁当…ドローンで出来たて提供 人手不足が深刻な物流業界の省人化、買い物弱支援など目的に 山間地で実証実験 最寄りのスーパーは10キロ以上離れる
人手不足が深刻化する物流業界の省人化や買い物弱者支援、物流に係る二酸化炭素(CO2)削減などを目的に、KDDI、KDDIスマートドローン、ローソン、一般社団法人ちちぶ結いまちと埼玉県秩父市は12日、コンビニエンスストアの店舗を活用したドローン配送の実証を秩父市内で行った。ローソン秩父荒川上田野店で調理した弁当などを、山間約7キロ先の同市浦山地区へドローンを使って配送し、住民に出来たての品を提供した。
ドローン配送は、秩父市など5者が昨年10月、環境省の「運輸部門の脱炭素化に向けた先進的システム社会実装促進事業」の採択を受けて、国の補助金を活用し今年1月から秩父市内で行っている。
物流営業所から配送される荷物をローソン店舗や道の駅などの中継拠点に一時集約し、ドローンやローソンの移動販売車を使い、コンビニ商品も含めて個人宅まで荷物を配送する。
■最寄りは10キロ
秩父市の中山間地域は、急速な人口減少に伴い、配送荷物の量が年々減少している。トラックの積載率も低下傾向となるため、1個当たりの配送コストが肥大化する課題が生じている。
同時に買い物に不自由な市民は年々増加。市などによると、浦山地区の住民は現在約60人で、65歳以上の高齢者が半数を占める。運転免許の未保有率は約3割。地区内に買い物ができる所がなく、最寄りのスーパーは10キロ以上離れている。
市は2020年以降、物流・公共交通ネットワーク「秩父モデル」の構築へ向け、企業と連携した共同配送の取り組みを推進。22年9月に発生した市内の中津川地区の土砂崩落の際は、集落2地区(中津川、中双里)の住民にドローンによる物資の定期配送を実現させた。24年7月には、国が策定した「デジタルライフライン全国総合整備計画」内の「ドローン航路」設定で、秩父地域が先行地域に選ばれた。
■飛行は12分
12日の実証配送は、物流営業所から届いた宅配物と、ローソン店舗で調理した「まちかど厨房」弁当や総菜など計約3キロ分をドローン対応の宅配ボックスに詰めて、秩父荒川上田野の同店から浦山地区の市老人福祉センター渓流荘までの高低差約150メートルの上空を、片道約12分かけてドローン飛行した。
ドローンは、モバイル通信を活用した遠隔自律飛行を行い、電波の届きにくい一部エリアでは、衛星ブロードバンド「スターリンク」で通信環境を確保した。
浦山地区に住む浅見ケイ子さん(89)は、ドローンで運ばれたローソンの弁当を受け取り、「まだ温かい」と感激。浅見さんは昨年12月に運転免許を返納し、現在は1日4本運行される市営バスに乗り、影森地区へ買い物に出かけている。「これから定期的にドローンが届けてくれたらうれしい」と話していた。
市などは今後、技術開発と改善を進め、27年度以降にドローンを活用した共同配送の実現を目指している。