市政の継承評価 埼玉・朝霞市長に松下氏が初当選 人口増が続く街 公共施設の建て替え、統廃合、児童増に伴う学童保育の整備など市政の課題は山積
任期満了に伴う朝霞市長選は16日投開票が行われ、NPO代表で無所属新人の松下昌代氏(54)が、元厚生労働省職員で無所属の小野寺徳子氏(59)と元陸上自衛隊員で政治団体代表の田村雄二氏(78)、投資会社役員で政治団体代表の黒川敦彦氏(46)の新人3人を破り、初当選を果たした。松下氏は市議や県議の実績を背景に市政継承を掲げ、地元に根差したこれまでの実績を強調。次点の小野寺氏を1546票の僅差でかわした。同市の女性市長は市制施行した1967年以来初めて。
現職の富岡勝則氏(70)=5期=が今期限りでの引退表明を受け、20年ぶりとなった新人同士の争い。富岡市政の継承を訴える松下氏と、市政の刷新を唱える小野寺氏の女性候補2人を支援する保守系の市議らが二分されたため、激しい選挙戦が展開された。
市の推計で2040年まで人口増が続くとされ、学校の教室確保や子育て支援策、建て替えが見込まれる公共施設のマネジメントなどが選挙戦で問われた。
16日午後11時過ぎ、当選確実の報を受け、松下氏の選挙事務所は集まった支持者らの拍手が渦巻いた。事務所に現れた松下氏は支援者から花束を受け取り、駆け付けた富岡氏と後援会長を務める元市長の塩味達次郎氏、保守系市議らと共に万歳三唱し、勝利の美酒に酔いしれた。
松下氏は「応援してくれた市民らが輪を広げてくれたおかげ。市議や県議としてコツコツやってきたことを評価してくれた」と勝因を分析。「地域防災力の強化や放課後子ども教室の整備など、これまでもこれからも市民の声を聴きながら市民と共に朝霞の未来を創りたい」と抱負を語った。
松下氏は名古屋市出身。1999年、当時の朝霞市助役を務めていた松下貞夫氏の長男と知り合い結婚。翌年、義母の急逝により朝霞市に転居した。2011年の市議選に出馬し、トップ当選。2期後、県議に。市議で子育てサークルの支援、県議では遊歩道の整備や公園のインクルーシブ遊具の設置に尽力した。昨年、富岡氏から市政の後継を打診され、今年1月「子育ての母親が安心して住み続けられる街をつくりたい」と出馬表明。選挙戦では保守系市議6人の支援を受け、「市民の命と財産を守り、防災や防犯、福祉を強化し、公共施設の整備を進める」などと訴え、支持層を拡大した。
人口増加が続き、市役所をはじめ公共施設の建て替えや統廃合などをマネジメントする時期が間近に迫る中、自主財源を確保する財政力の強化、児童増に伴う教室の確保や学童保育の整備など市政の課題は山積している。
松下氏の行政手腕は未知数だが、選挙のスローガンの「朝霞に住む人々がゆたかに生き生きと人生を謳歌(おうか)する百年都市」を実現できる施策に全力を挙げてほしい。