【東京ウオッチ】まだ戦争が起こる以前の静寂かもしれない―ワタリウム美術館を舞台に雨宮庸介展 いまのTokyoをつかむイベント情報(3月1日~9日)
◎今週の一推しイベント
【3月1日(土)】
▽「雨宮庸介展-まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」(~30日、渋谷区)
国内外で活躍する現代美術家の雨宮庸介さんの展覧会が、神宮前のワタリウム美術館で開催されている。日常のありふれたモチーフを用いて固定観念をくつがえす彫刻や映像作品を発表してきた約25年の集大成を紹介する。
狭い扉を開けるとロッカーから展覧会場に出てきたことに気づくインスタレーション「ロッカーの入り口」は、日常と非日常の境界線を表している。
東日本大震災とコロナ禍を反映した記録映像「石巻13分」は、大震災から10年後に制作した映像インスタレーションを再編集した。宮城県石巻市の日和山公園内にある廃虚の壁に、コロナ禍のベルリンで友人と話す雨宮さんが映し出される。「2011年から欧州に約10年滞在し、被災地は遠くなったが、コロナ禍で世界の人々と同時につらい体験をしたことで、違った種類の共感方法を得られたと思う」
「長テーブルと林檎が描かれたドローイング」は、会場に合わせたサイズのテーブルに代表作の彫刻シリーズ「溶けた林檎」を並べた作品。「ドイツと日本では同じ品種でもリンゴの形が異なる。違いを肯定できれば、争いからは遠ざかることができるのかもしれないと創作を続けている」
館内で制作した「VR まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」は、没入型の映像作品だ。準備期間中に亡くなった母への思いが伝わってくる。館内を歩き回る雨宮さんのささやきは、幸せや悲しみの感情を人々に共有させ、平穏な日々が徐々に壊れていく予感も漂わせる。「美術館でアートを鑑賞できる平和な日常が続いてほしいと心から願っている。しかし、それは、まだ戦争が起こる以前の静寂かもしれない」
○そのほかのお薦めイベント
【3月1日(土)】
▽「国際女性デー2025 in 千代田図書館」(~22日、千代田区)
国連が3月8日の「国際女性デー」を提唱して50年。この日に合わせて女性の活動や生き方をテーマとした本が、千代田図書館に展示されている。
児童書から小説まで多様なジャンルを取りそろえているため、読書を通して多くの人が“女性の活躍する社会”について考えられるだろう。
▽「映画監督 アンジェイ・ワイダ」(~23日、中央区・国立映画アーカイブ7階展示室)
ポーランド映画の巨匠アンジェイ・ワイダ監督(1926~2016年)の作品と生涯を紹介する展覧会が、京橋で開かれている。
親日家のワイダ監督が設立に関わった同国南部クラクフの「日本美術技術博物館Manggha(マンガ)」の所蔵品を中心に、監督自ら描いたスケッチや絵コンテなど資料約200点を展示。ポーランド陸軍将校だった父をソ連当局に殺害された生い立ちや、60年以上に及んだ作品歴を克明にたどる。
第2次世界大戦当時のポーランド国民の苦難を描いた抵抗3部作の一つ「灰とダイヤモンド」で、主人公が身に着けていたジャケットと靴の実物展示はひときわ目を引く。歌舞伎俳優・坂東玉三郎さんが出演承諾を伝えた肉筆の手紙など、日本との深い縁を示す品々も。
本展を監修したラファウ・シスカさんは「ワイダは彼が敬愛した黒沢明監督と同じように、自国の歴史や習慣を描ききることによって世界中の人々に理解された」と語った。
▽「A.P.C. デニム フォーカス」(~16日、渋谷区・A.P.C.代官山ファムほか)
フランスのファッションブランド「A.P.C.」のデニムに焦点を当てたショップイベントが、代官山などの各店で開催されている。
同ブランドのデニムは、モダンなフレンチスタイルを提案するアイテム。高品質な生地と美しいカッティング、時代を超えたスタイルで多くの人々の支持を得ている。
定番のデニムアイテムに加え、日本限定のデニムカプセルコレクションを展開。ブルゾンやジャケットなどメンズ、ウィメンズのアイテム全8型をラインアップした。
長い時間をかけてはきこんだ自然な風合いのデニムシリーズ「バトラー ウォーン アウト シリーズ」も一部店舗で販売。実際に購入してはいていた人から色落ちが良いものを引き取り、再修理した商品。加工では出せないリアルな風合いが特徴だ。永遠のファッションアイテム、デニムのさまざまな魅力に触れることができる。
▽「ハネダ スター&ルクス」(通年営業、大田区)
スイーツギフトの販売に特化した商業エリアが、羽田空港第1ターミナルで開業した。旅行や帰省、出張時のギフトを購入する際におすすめのスポットとなり、「洗練」「上質」をテーマにした全13ブランドが集まった。
注目は、トルコ発のバクラヴァ専門店「ナーディル・ギュル」。職人による手作業で、何十層にもパイ生地を重ねたバクラヴァがおすすめだ。バウムクーヘン専門店「ねんりん家」は、羽田空港限定のラム酒を利かせた「熟成ラムバター~ディロンラムを染み込ませて~」を新発売。「とらや」「小布施堂」などの人気ブランドも出店。飛行機での出発前に特別なひとときを味わえるだろう。