埼玉新聞

 

縁つなぎ、家族でつむぐこだわりの味 一番人気は天ざる、そばのアイスも 大宮区・手打ちそば吉敷末広

  • 現在は、2代目の武さん(右)がうどん、3代目の誠さんがそばを手打ちしている

  • もっちりとした食感が人気の十割太麺そば。手打ちの店も年々少なくなっているという

 国産そば粉を石臼挽きし、丁寧に手打ちした十割太麺そばが味わえる「吉敷末広」。さいたま新都心コクーンシティ裏の住宅街にあり、地元の親子連れや遠方から来る愛好家らでにぎわう。こだわりのそば店で、健康食の文化を家族でつないでいる。

 初代の浜口武政(たけまさ)さんがそば屋を始めたのは1968(昭和43)年。それまでは代々、東京・墨田区錦糸町で菓子問屋を営んでいた。仕事の知り合いにそばに詳しい人がいたことがきっかけで、吉敷町にそば屋を開店した。大宮にアイスキャンデーの工場を持っていたことからなじみがあったという。どの町にも1軒ぐらいあるからと、名前は末広に。当時は景気もよく、近隣の会社への出前が中心で、出前専門の店員が3人いても追いつかないほどだった。

 後に2代目となる武さん(77)は、家業を継ぎ自分は菓子問屋になると思っていた。しかし、父親が突然そば屋を始めた。「菓子問屋をやめたので驚いた」という武さんは、武政さんの勧めで目黒区のとんかつ屋で修行し、そば屋を手伝うことになった。「カツライスも出すそば屋は珍しかったが、近隣にそば屋も数軒あり、独自色を出せた」と懐かしむ。

 当初は機械打ちだったそば作りも、風味や食感へのこだわりから手打ちへ。出前中心だった店のスタイルも変わった。来店して食べる人が多くなり、常連客も増えた。武政さんは83歳で亡くなるまで、店に立って武さんらを見守っていた。

 現在は武さんの長男、誠さん(45)が3代目として店を切り盛りしている。誠さんは建築関係の仕事に就いていて、若い頃はそば屋を継ぐことは全く考えていなかったという。「食に関しても関心はあまりなかった。父親からも自分の好きなことをやっていいよと言われていた」と話す。ところが、店を手伝っていた母親の敏子さんが2003年、54歳の若さで急逝。「このまま父親一人にしてはおけないと思った」として、28歳の時に店に入ることにした。

 老朽化した店舗兼住宅の建て替え時に市内の人気そば店「土合やぶ」(南区)で修行。次男がアレルギー持ちで食材に気を使うようになり、徐々に量よりも質にこだわるようになった。北海道産のそば粉を使い、毎日30から60食分の十割そばと二八そばを丁寧に打つ。天然の車エビが載った天ざるが一番の人気メニューで、週末は夜の時間帯も営業、酒やつまみも出す。そばのアイスは昼夜楽しめる。「親子連れのお客で子どもが素直においしいと言ってくれるのが何よりもうれしい」と誠さん。そば打ち教室にも取り組んでいる。「食べているものが体をつくるので、多くの方に健康食としてのそばをお薦めしたい」と意気込む。

 【メモ】さいたま市大宮区吉敷町4の134。電話048・642・6105。平日は午前11時~午後3時、金土日曜は午後5時~。火曜定休。駐車場あり

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