道路陥没1カ月、運転手の救助「何よりも先に」 切り立った穴、徐々に拡大する陥没箇所 周辺に住宅が密集、ヘリコプターも制約多く 救助計画も変更…防災アドバイザー「特殊な災害」
八潮市で県道が陥没し、トラックが転落した事故は、2月28日で発生から1カ月がたった。トラック運転手の救助が急がれる一方、復旧には長期化が見込まれ、周辺の住民や企業に不安が広がっている。
■救助「何よりも先に」/ 危機管理防災アドバイザー・元深谷市消防長の田中さん
発生翌日から現場に足を運び、報道や交流サイト(SNS)を通して情報発信してきた元深谷市消防長で危機管理防災アドバイザーの田中章さん(65)は、拡大する陥没現場の変遷を「特殊な災害」と位置づけ、運転手男性の救助について「現状の計画にこだわらずに、何よりも先に取り組むべきだ」と強調した。
田中さんは事故翌日の1月29日にテレビ局の依頼で現場に入り、以降定期的に現場を観察。陥没箇所が徐々に拡大し最大15メートルの深さになったことを受け、救助計画も変更されていたという。現場は切り立った穴で、周辺には住宅が密集。「通常の転落事故などではヘリコプターで隊員を投入する選択肢もあるが、今回の事故は現場が住宅密集地で、低空で飛行するとダウンウオッシュで住宅屋根が吹き飛ばされるなどの被害が出る。制約が多く難しい状況だった」と振り返った。
県などの調査では、運転席部分と男性は下水管内に取り残されているとみられている。県が示した計画では、下水の流れを止めるため、約3カ月を要するバイパス工事後、男性の救助に乗り出す方針だ。
田中さんは事故に災害救助法が適用されたことに言及し、「住民への支援を講じた上で1日でも上水道を止めれば、下水に流れる水を抑え、救助が可能となる。『救助最優先』という言葉が置き去りになっているように感じてしまう住民もいるはず」と指摘。不安を少しでも払拭するため、「管轄の草加八潮消防局や草加市長、八潮市長が積極的に情報発信するべきだ」とした。