埼玉新聞

 

野生絶滅からの「野生復帰」 全国唯一の自生地、埼玉・羽生で活動、保存会の会長「念願がかなった」

  • 宝蔵寺沼ムジナモ自生地の様子を見回る野中孝一さん

    宝蔵寺沼ムジナモ自生地の様子を見回る野中孝一さん=羽生市三田ケ谷

  • 宝蔵寺沼ムジナモ自生地の様子を見回る野中孝一さん

■羽生市ムジナモ保存会会長(羽生) 野中孝一さん

 埼玉県の「レッドリスト2024植物編」の改訂で、野生絶滅だった水生食虫植物ムジナモが絶滅危惧ⅠA類となり、「野生復帰」した。全国唯一の自生地、羽生市三田ケ谷の宝蔵寺沼ムジナモ自生地(国指定天然記念物)で活動する羽生市ムジナモ保存会の野中孝一会長(69)は、「念願がかなった」と喜んでいる。

 ムジナモは、モウセンゴケ科ムジナモ属の食虫植物で、浮草。ミジンコなどのプランクトンを養分にする。夏場、まれに花が咲く。野中さんは「ムジナモは生活の一部。自宅でも栽培している。毎年、夏に自生地で5回以上見学会をするのが楽しみ」と話す。

 保存会は最初1961年に発足した。66年に自生地が国の天然記念物に指定され、68年には市が自生区域約3ヘクタールを公有地化した。現在の保存会は83年の再発足。「会員は約130人。市の教育委員会や埼玉大学と連携してムジナモの保護と増殖、自生地の保全に努めている」と紹介する。

 代々、自生地の近くに住む野中さん。2022年から会長に就任した。「ムジナモが100万株以上に増殖した時に会長になった。現在まで100万株以上を推移。目標だった野生復帰ができた。三田ケ谷小学校で40年以上やってくれた増殖と放流活動の効果も大きい」と振り返った。

 三田ケ谷小には5年生の孫優桃(もも)さん(11)もいる。「孫もムジナモの飼育に熱心で、相談にのっている」とほほ笑む。「三田ケ谷小は3月末に閉校となり、3校統合で羽生東小学校となるが、ムジナモ飼育の伝統はつなげてほしい」と期待を寄せた。

ツイート シェア シェア