埼玉新聞

 

青い風船、保育園の花壇に舞い降りる 埼玉・戸田 そこから続く子どもらの交流、飛ばしたのは山口の児童ら 距離800キロ…縁もゆかりもない保育園と小学校、一つの風船がつなぐ

  • 新曽保育園を訪れ、園児らに学校の様子を説明する山口市立島地小学校の吉松英樹校長

    新曽保育園を訪れ、園児らに学校の様子を説明する山口市立島地小学校の吉松英樹校長=2月27日午後、戸田市新曽の市立新曽保育園

  • 新曽保育園を訪れ、園児らに学校の様子を説明する山口市立島地小学校の吉松英樹校長
  • 風船に添えられていた、山口市立島地小学校児童のメッセージと花の種

 昨年11月1日朝、戸田市新曽の市立新曽保育園の園庭花壇で、青い風船が一つ、舞い降りているのが見つかった。花の種とともに「えがおでたのしくしまじ小1年」のメッセージが添えられていた。風船を飛ばしたのは、約800キロ離れた、全校児童19人の山口市立島地小学校の児童たち。その後、子どもたちの交流が続いている。2月27日には、同校の吉松英樹校長が児童のメッセージを携えて同園を訪問。園児に「山口県に19人の友達がいると思ってほしい」と笑顔で呼びかけた。

 同市立島地小学校は1874(明治7)年に開校し昨年、150周年を迎えた。山口県中央部、市南東側の山間に位置し、校舎脇には清流「島地川」が流れている。

 風船は昨年10月31日午後3時ごろ、人権教育の一環として60個、ヒマワリの種とともに、児童らによって空に放たれた。「これまでも三重県辺りまで飛んで行ったという話は聞いたことがあるのですが」と吉松校長。翌朝、放たれた風船のうちの一つが新曽保育園に着いているのを保育士が見つけ、同園から島地小学校に電話連絡し、その後、年長児がお礼の手紙を同校に送った。

 これをきっかけに12月には同園のお楽しみ会で年長児が創作劇「じんけんのはな」を披露。島地小からは絵本と手紙、ヒマワリの種が届くなどの交流が続いてきた。

 東京都内で行われる行事に合わせ、同園を訪れた吉松校長を年長の園児らが歓迎した。島地小児童のビデオメッセージでは、タケノコ掘りや、魚釣り、竹灯籠を作り「花尾八幡宮」で明かりをともしたこと、ホタルをつかまえ育て、川に放流するなど同校での活動を紹介。高学年児童から「夜の空に飛んでいるホタルを見に来てください」と呼びかけられた。

 映像を見た園児の一人は「小学校は楽しいですか」と質問。吉松校長は「小学校の周りにはテーマパークもスーパーもないが、地域の皆さんと、楽しいことを自分たちでつくっている。皆さんはこれから、山口に19人の友達がいると思ってほしい」と呼びかけ。園児からはお礼に「ともだちの花」の歌声が贈られた。

 吉松校長は「夢みたいな話。世の中は『つながっていくこと』が大切と児童たちにも伝えている。子どもたちが責任を持ち、自分たちの行動が誰かに影響を与えていると感じ、自信を持ってくれたことをうれしく思う」と笑顔。同園の油屋希久子園長は「一つの風船が遠く離れた、縁もゆかりもなかった私たちをつないだ。いろいろな環境の子どもたちが自分と友達を大切に思い、それぞれの道を歩むきっかけになれば」と話した。

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