男性客らスマホ片手に興味津々…バリスタはヒト型ロボット、作務衣まといコーヒー提供 全国初!さいたま南区に調理ロボのいるテイクアウト店 もう1台は修行中の「どらやき職人」
さいたま市南区にロボットがコーヒーを入れてくれるテイクアウト店「ハレとケ」がある。非日常(ハレ)的な最新テクノロジーのロボットが、日常(ケ)生活の中で、当たり前の存在になってほしいとの願いが、店名に込められている。小売業の人手不足解消につながる未来の姿が、ここにある。
■「ドラえもん」
約30平方メートルのこぢんまりした店内には、コーヒーミル(粉砕機)や電気ポットなど複数の機器と作務衣(さむえ)をまとったヒト型ロボットが2台。ロボットはバリスタとしてコーヒーやリンゴジュースなどを提供する。
オーナー兼店長の野口頌子(しょうこ)さん(37)は念願の飲食店経営。店を開くまでは都内に夫婦で暮らしていたが、「浦和が住みやすい」という知人の紹介で都内から昨年移り住んだ。
産業用ロボットの製造会社に勤務する夫の祐喜さん(37)が子どものころに夢見た人気漫画「ドラえもん」のいる世界を応援しようと、夫妻は昨年10月に南浦和で開店。祐喜さんによると、外食チェーン店で配膳ロボットを見かける機会は増えたが、調理ロボットのいる喫茶店は全国初という。土日は時間さえ合えば、祐喜さんも店に立つ。
頭と両腕にカメラを装着し、滑らかな動きでコーヒーを入れるロボットは、多品種少量生産の電子部品工場などで使われる産業用。中古ながら1台の値段は「国産車が買える程度(100万~200万円)」と高額。それでもインターネットオークションに出品されていることを知ると、すぐさま入札したという。
■ドリ&ドラ
ロボットの名前は「ドリ」と「ドラ」。ドリはハンドドリップでコーヒーを提供。ドリッパーの粉を器用にならし、繊細なタッチでお湯を注ぐ様は人間さながら。ホットの場合、入れるのに約7分かかるが、子どもだけでなく父親世代の男性客らがスマートフォン片手に興味津々だという。
ドラは別の看板商品「米粉どらやき」の職人として「目下修行中」と笑う頌子さん。仕上げにまだ若干ばらつきがあるため、「どらやき」は手作りで提供している。
店内には地元産の無農薬野菜や無添加のスナック菓子など自然由来の食品が多数並ぶ。頌子さんは「さまざまなモノの進化で周りに人工的な物が増えていく世の中。日々の食べ物(日常=ケ)で体がつくられていることを感じてほしい。未来に良いものを残したい」と話す。
■夢は農業支援
入居物件には約20平方メートルの空きスペースが残る。今後、近所の子育て世帯や女性経営者ら地元の人々が交流できる場への活用を検討している。また夫妻はロボットと人間の共存社会に向けて、「このお店の知見を生かして農作業ロボットの開発もしてみたい。人手不足解消につながれば」と夢を語る。
店内外にはイートイン用に計8人程度が座れる長いすを用意。「待ち時間でおしゃべりを一緒に楽しめたら」と頌子さん。祐喜さんも「最初は何の店? って思うかもしれないけど気軽に来店して」と呼びかけた。
同店の住所は、さいたま市南区文蔵2の30の5。営業時間は正午~午後5時。営業日は写真共有アプリ「インスタグラム」に随時掲載。