閉店の危機「なんとかこの場に」 25周年迎える埼玉県庁・障害者の店「かっぽ」 売り上げ増へ模索
障害のある人とない人が共に働く県庁内の売店「かっぽ」が閉店の危機に直面している。障害者の社会参加推進を目的に1997年に開店し、今年で25周年。障害者が施設外の人と接して賃金を得る貴重な場として活用されてきた。コンビニエンスストアの進出などを背景に店舗の売り上げは減少を続け、コロナ禍で財政が急激に悪化。店舗担当の板倉真紀さん(41)は「障害の重度に関係なく働ける場所として、何とかこの場所にあり続けたい」と切実な思いを語る。
かっぽは県庁第二庁舎1階にアンテナショップとして営業し、食品や飲料のほか、障害者が就労支援センターなどの施設で作った菓子や手芸品などを取り扱う。県内の障害者団体や施設など10団体の利用者と職員が日替わりの当番制で店番し、県庁を巡回するワゴンでの販売も行う。県観光課が紹介する県内の名産品の販売や、障害者の県庁での職場体験事業を受託するなど、県との連携も積極的に行っている。
■便利なワゴン販売
店の当番となった就労支援センター「夢燈(むとう)館」(さいたま市浦和区、桜区)利用者の木村洸貴(ひろき)さん(39)と木村美涼(みすず)さん(37)は、ワゴンに商品を乗せて県庁内を巡回し販売した。よく購入するという男性職員は「小腹がすいた時に利用する。近くに来るので便利でありがたい」と話す。
洸貴さんは仕事について「大変なことはない。(ワゴンを押して)結構歩くのも大丈夫」。苦手だったという接客も「少し得意になったかな。(客が)来てくれないと寂しい」と言う。施設職員の三上綾子さん(41)は「作業所の中とは関わる人の多さが違う。それを楽しみにしている利用者もいる」と話す。
■弁当販売1日10個に
2008年に県庁内にコンビニが開店し、周辺の飲食店が充実すると売り上げが減少。00年の販売当初は1日約100個売れていた弁当は10個ほどに落ち込んだ。店舗前に自販機を設置し一時売り上げが回復したが、県庁内の設置数増加により再び利用者が減少。店舗やワゴンの売り上げは最も落ち込んだ16年から回復したものの、人気商品の撤退などにより伸び悩んでいる。
障害者施設などがブースを出展するイベントの開催や、県事業の受託などで何とか危機を乗り越えてきた。しかし、新型コロナの流行で、職員の在宅勤務や、事業、イベントの中止が相次ぎ経営状況に追い打ちをかけた。板倉さんは「赤字が続いている。開店した当初は盛り上がったが、頭打ちの状態」と厳しい現状を語る。
■施設と違う刺激
店舗の売り上げによる運営には限界があるとし、新たな事業も開始した。名刺に点字を打つ「点字名刺」注文の受け付けを開始し、夜間勤務の多い県警の要望に応え24時間利用できる食品の自販機を今年5月に設置。新たなイベントの開催も検討中で、県障害者福祉推進課は「可能な限り支援していきたい」と話す。
かっぽの店番手当は1日1団体2千円と高くはないが、板倉さんは「施設とは違う刺激的な場所として大事。最重度といわれる働くことから縁遠い人たちにとっても大事な場所」と意義を語る。「もっと利用してもらえるよう、いろいろな商品を模索したい。仕事体験もできるので、障害のある人にぜひ活用してほしい」と訴えた。