脳にインプットしたにおいを再現 さいたま市北区の「香り技術研究所」 シャンプーや柔軟剤の香りだけでなく強烈な刺激臭を発するスカンク、アルパカのつばなどの匂いも創出
香料や香りを拡散する放香器を製造販売するプロモツール(本社・東京都文京区)。大手航空会社の空港内ラウンジや高級ホテルなどにオリジナルの香りを提供し、おもてなし空間を創出したり、店舗でシャンプーや柔軟剤などの香りをワンプッシュで確認できる「アロマテスター」の製造販売の柱事業のほか、害獣が嫌う匂いを使った忌避剤を製品化するなど新分野にも力を入れている。その拠点となるのが2023年7月にさいたま市北区宮原町に開設した「香り技術研究所」だ。香りで生活を豊かに―。調香師たちは日々、こんな思いで研究開発に励む。
■オオサンショウウオ
プロモツールは、05年に日本で公開された映画「チャーリーとチョコレート工場」の販促策として映画館にチョコレートの匂いを漂わせる企画で「香りビジネス」に参入。以降、業界の先駆者として、常に新しい製品を世に送り出し、業績を伸ばしてきた。事業拡大に伴い、さらに研究開発機能を高めるべく、本社からも好アクセスで水資源が豊富なさいたま市に「香り技術研究所」を開設。同社は主に香りを使ったブランディングや空間デザインを手がけてきたが、新分野にも力を注ぐ。
多くの害獣などの天敵、オオカミの尿のにおいを再現したネズミ用の忌避剤はすでに製品化。水族館や博物館の展示に合わせて、敵から身を守るために強烈な刺激臭を発するスカンク、アルパカのつばなどの匂いの創出に協力してきたが、最近ではオオサンショウウオの体液の匂いを再現した。地方自治体の特長を表現したオリジナルアロマも開発した。
■500種類の香料から
研究所では、2人の調香師が開発に取り組む。オオサンショウウオの体液のように、実際に嗅いで脳にインプットしたにおいを、約500種類の香料(原料)の中から組み合わせて再現する。微調整を繰り返す作業に、シニア調香師の渡辺武志さん(29)は「妥協したら終わり。どこまで突き詰められるか、自分との闘い。それこそがものづくり」と力説。もう一人の調香師、鎌田耕旬さん(33)も「本物の香りを嗅いで再現することで一般の人にワクワク感や楽しさ、幸せを届けられるのがやりがい」と笑顔を見せる。
現在はネズミ用の忌避剤が野外にいるシカなどの害獣にも応用できるように大学と一緒に生体分析や実験をしたり、普段の空間にいながら森林浴を体感できるような香りの完成などを目指しているという。研究所の横山弘所長(71)は「他社では再現しないようなにおいまで開発できる能力があると自負している。安全性を守りながら、効果や効能を感じてもらえる香りをどんどん開発していきたい」と自信をみなぎらせた。
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プロモツール「香り技術研究所」 さいたま市北区宮原町3の161 大井ビル2階
本社 東京都文京区本駒込6の5の3 ビューネ本駒込5階▽電話03・5940・6637