埼玉新聞

 

泣き声が…川で溺れた男児救う 運転中の女性など男女4人が集まって 名乗らず去った2人「ぜひ連絡を」

  • 感謝状を受け取った佐々木和美さん(中央)と西沢裕子さん=6日午前、狭山市稲荷山の狭山警察署

 狭山市の不老川で流されていた10歳の男児の救助に貢献したとして、狭山署は6日、いずれも入間市の佐々木和美さん(60)と西沢裕子さん(49)に感謝状を贈呈した。ほかに救助に携わった2人の男性がいたが名乗らずに立ち去ったといい、同署は「ぜひ名乗り出てほしい」と呼びかけている。

 同署によると、6月12日午後3時ごろ、不老川沿いでザリガニ釣りをして遊んでいた男児2人のうち、1人が足を滑らせて川に流された。川は前日の雨で増水し、流れも急だった。

 「車で通りかかったとき、男の子の泣き声が聞こえた」と佐々木さんは発見当時の状況を説明。泣いていたのは溺れた男児と遊んでいた友人で、佐々木さんが目を凝らすと「川の中央で男の子が流されていた。後頭部だけが水面に浮いている状態だった」。

 佐々木さんが現場へ向かうと、すでに男性が男児救助に尽力していた。その後、別の男性も男児救助のために荷物ひもを持って駆け付け、3人で救助活動に当たった。しかし、男性が投げたひもは途中で切れてしまう。

 そこに、入曽から子どもの迎えで帰る途中だった西沢さんが車で通りかかり、異変に気付き停車した。「大人たちが集まり、ロープを探しているようだった。子どもが流されていると聞き、車に積んであったブースターケーブルが思い当たった」

 西沢さんがケーブルを手に川へ走ると、男児は川端のコンクリートブロックにしがみついている状態だった。佐々木さんらが「頑張れ」と声をかけると、男児はうなずいたという。その後、ケーブルにつかまった男児を男性2人が引っ張り上げ、佐々木さんがブランケットをかけた。男児が足を滑らせた地点から約400メートル下流でのことだった。

 西沢さんは「夜になっても男の子の声が耳に焼き付いていた。(小学6年生の)自分の子がもし流されたら、と考えてしまった。4人いて初めて救助ができた」と振り返った。

 狭山署の真野益夫署長は「不老川は氾濫しやすい。昨年は県内で24件の水難事故が発生し、14人が亡くなった。地域の人の協力によって、大事に至らずに済んだ」と勇気ある行動をたたえた。

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