埼玉新聞

 

閉店予定のパン店、営業を継続 “体力の限界”開業25年の節目に引退考えるも…子どもの貧困問題知り、子ども食堂を運営 埼玉・幸手 販売は食パン一本に絞って経費節減、運営費を捻出

  • 子ども食堂で提供しているメニューを紹介する店主の己谷茂さん

    子ども食堂で提供しているメニューを紹介する店主の己谷茂さん=幸手市中のプルミエール

  • 子ども食堂で提供しているメニューを紹介する店主の己谷茂さん

 幸手市中のパン店「プルミエール」が1月中旬から、子ども食堂の運営を始めた。熟練の職人が作る本格的なパンやデザートをワンコインで提供している。店主の己谷茂さん(70)は昨年末で閉店する予定だったが、お世話になった地元に恩を返そうと営業を継続。「幅広い世代が集まって交流できる居場所にしたい」と利用を呼びかけている。

 己谷さんはプリンスホテルなどの有名ホテルの製パン・製菓部門で約30年勤務した後、2000年に幸手市で独立。パン教室を開いたり、地元の高校生とご当地パンを共同開発したり、地域活動にも熱心に取り組んでいる。

 加齢による体力の限界を感じて開業25年の節目に退き、事業譲渡しようと考えていた。しかし、「子どもの4人に1人が朝ごはんを食べられない」という貧困問題を知り、受け皿となる子ども食堂が幸手の中心市街地にない現状を問題視。「自分の知識や経験を生かしておなかいっぱい食べてもらいたい」と運営を思い立った。

 週単位や月単位で運営する子ども食堂が多い中、同店は営業日ならいつでも利用できるのが特徴。その代わりに数量限定で提供している。18日の日替わりランチ(中学生以下300円、大人500円)は具だくさんのピザトーストと野菜たっぷりのミネストローネ、マロンのシュークリーム。日替わりのデザートプレートや飲み物もある。

 販売するパンを食パン一本に絞って経費を節減して運営費を捻出しており、現在のところフードドライブなどからの食材提供は受けていない。店内のいすやテーブルも全て手作り。「手弁当だけど、健康維持も兼ねているから」と己谷さんは笑う。

 周知不足で利用者が少ないことから、店舗前に家族が描かれた木製の看板を設置した。デザインを手がけた市内のヘアメークアーティストの秋葉明子さん(50)は「子どもが集まる温かい場所をイメージした。大勢の人においしいパンを食べに来てもらいたい」とアピールする。

 己谷さんは「利用した人から『また、来るね』と言ってもらえるのがうれしい。子どもから大人まで、幅広い世代が交流できる居場所にできれば」と話している。

 営業時間は午前11時~午後5時半、定休日は水曜と木曜。問い合わせは、プルミエール(電話0480・43・7744)へ。

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