埼玉新聞

 

大滝トンネルの本体工事が完了 全長2053メートルのトンネル、延べ2万8千人が従事 今後は舗装や照明、防災設備の工事など進める 開通は2027年度を目指す 開通後は走行時間の短縮や安全性の向上など期待

  • 本体工事を終えた大滝トンネルを紹介する工事関係者=13日、秩父市

    本体工事を終えた大滝トンネルを紹介する工事関係者=13日、秩父市

  • 本体工事を終えた大滝トンネルを紹介する工事関係者=13日、秩父市

 県西関東連絡道路建設事務所が、秩父市大滝強石~落合区間で進めている国道140号「大滝トンネル」の本体工事の全作業が完了した。2022年に掘削作業を開始し、24年3月に全長2053メートルのトンネルを貫通。今年2月末に、坑内のコンクリートの壁を仕上げる「覆工コンクリート」などの工程を終えた。本体工事を手がけてきた大林・西武・斎藤特定建設工事共同企業体(JV)の古家義信所長(48)は「大きなけが人を出すことなく、県内外の作業員が一体で業務を全うできた」と話している。

■火薬100トン使用

 大滝トンネルは、関越自動車道花園インターチェンジ(IC、深谷市)と新山梨環状道路(山梨県)を結ぶ、延長約110キロの地域高規格道路の一部。開通後は走行時間の短縮や安全性の向上、観光地へのアクセス改善など多くの効果が期待できる。

 同事務所によると、約2年10カ月の本体工事期間は延べ約2万8千人の作業員が従事した。坑内の岩盤を火薬の発破で掘削する際に使用した火薬類は約100トン(発破約1700回分)、掘削土量は計約17万立方メートル。想定よりも地山(じやま)が安定していたため、予定よりも5カ月間早く貫通させることができた。

■夜祭の山車曳きも

 古家所長は「若手が多い現場だったが、ベテランが率先して指導し、新人の成長を支えてくれた」と振り返る。兵庫県出身の古家所長を含め、JV作業員の大半は埼玉県内の現場が初めてだった。

 任務を終えたJV作業員は、約3年間暮らした秩父市を今月中に去る。古家所長は「休日はバイクでのツーリングや秩父グルメを満喫した。秩父夜祭の山車曳(ひ)きに参加させてもらうなど、地域の方とも交流が深められたので、離れるのが惜しい」と残念がっていた。

■仕事にやりがい

 本体工期間中、県内外の学校関係者ら約2800人が現場に訪れ、大迫力の発破作業などを見学した。地域住民や市立荒川西小学校の児童らとは、トンネル内で探検イベントを開催し、作業員との交流を深めてきた。

 担当監督員としてJVとの協議や工程管理、現場見学者の案内業務などに携わった秩父市出身、同事務所の宮城智文さん(31)は「トンネル工事の現場に携わるのは初めてだったので、JVの方にたくさんのことを学ばせてもらった。地域の方に『開通が楽しみ』と言っていただいた時に、仕事のやりがいを実感した」と熱く語った。

 大滝トンネルは現道約7キロを約2キロに短縮。車幅3・25メートルの2車線で、2・5メートルの歩道も整備される。事務所は今後、トンネル内の舗装や照明、防災設備などを進め、27年度の開通を目指す。

ツイート シェア シェア